あれは私が体育の授業で突き指をしたときのこと。
原田先生に言われて保健室に行こうとしたんだけどその時に山崎君がついてきてくれたんだ。
保健委員だから当たり前といえば当たり前なのかもしれない。
だけどやっぱり嬉しくて。
『名字くん、大丈夫か?冷やした後包帯を巻くが痛かったら言ってくれ。』
『うん。大丈夫大丈夫!山崎君は優しいね。総司とは大違い。』
優しいと言ったせいか山崎君の顔が一瞬赤くなった気がしたんだけどその後すぐにいつもの厳しい表情になる。
『なんで沖田さんがでてくるんだ…。』
『え?あ、別に意味はないんだけど。総司ってば私が突き指したのにどんくさいよねの一言だけだよ?ひどくない!?』
『仲が良いんだな。』
『あー…腐れ縁かな?幼馴染なんだよね。』
『そうだったのか。』
それまでこんなに山崎君と話すことなんかなくて。
話し出したらけっこう気さくだし冗談も通じるとわかって嬉しくなって。
しかもしばらく突き指がよくなるまで気にかけてくれたんだよ?
荷物を持とうとしたら代わってくれたり、怪我の具合も見てくれた。
そんなことされてきゅんってしないほうがおかしいんだよ。
だから私は間違ってない!断じておかしくない!!!
「ね!総司!!!」
「…一人で妄想するのは勝手だけどいきなり同意を求められてもなんのことかわからないんだけど。」
「え?あ、ごめん。つまり山崎君ってかっこいいよね!ってこと!!」
「…きるよ。いろんな意味で。」
「あああ!ごめんなさいい!!総司様ー!!」
「…はぁ。気にすることないんじゃない?送った時に気がつかなかったら今頃気づいてももう遅い時間だし、他の人に聞いてるだろうって山崎君も思うでしょ。だから返事こないんじゃないの?」
「そうかな?」
本当にそうかな。
不安になるよ。いきなりなんだこいつとか思われたら嫌だもん。
「そうそう。まあ明日になったら山崎君から言ってくるでしょ。無視とかするタイプじゃないだろうし。…そろそろ寝かせてよ、本当に眠いから。」
「あー…うん。おやすみ、総司。」
「おやすみ。」
そう言って総司は電話を切った。
無理もないよね、もう日をまたいでる。
私は携帯を枕元に投げると布団にもぐりこんだ。
本当はもっともっと山崎君のことが知りたい。
メールもしたいし、できることなら直接声が聞きたい。
つい最近までそんなこと思ってなかったのに。
好きって意識してしまったらもう。
知りたい。
近づきたい。
一緒にいたい。
とめどなく思いが溢れてしまう。
山崎君は嫌がらないでいてくれるかな?
こんな私でも笑ってくれるかな?
ああ。
そういえばもうすぐお祭りがあるな。
山崎君と行きたいな…。
神様。
願い事ひとつだけ叶えてくれませんか?
私…山崎君の好きな人になりたい。
そんなことを考えているうちに、私は夢の中へと落ちていった。