「…ああ!やっぱりやめておけばよかったんだー!!!」
「ねえ、そのセリフもう聞きあきたんだけど。それしか言えないんだったら切るよ。」
「待って待って総司待って!切らないで―!!」
ベッドの上でのたうちまわること早十分。
そして永遠と答えのでない迷惑電話をかけはじめてからは早五分。
電話の向こう側からそれはそれは盛大なため息が聞こえてきた。
「あのさ、名前。改めて確認するけど君は山崎君にメールをしたんだよね。」
「そうだよ。」
「明日の数学の授業が生物に変更になったかどうか…だよね。」
「うん。」
「それを送ったのが九時。今は?」
「十一時!」
「で、返事がないと。」
「そうなのー!!!私変なこと送ったのかな!?」
なんでー!?と叫んだところでこの声は山崎君には届かない。
届くとしたらきっとしかめ面で電話してくれてるであろう総司と「うるさい!」と怒鳴る親ぐらいだ。
明日の授業が変更になる…と頭のどこかでうっすら覚えていたんだけど何に変更になるかまで私の残念な脳みそは覚えていなかった。
本当だったらさっさと千鶴ちゃんか総司に聞いてる。だけど…。
「せっかくだから送ってみたくて。」
「ちなみに生物であってるけどさ。山崎君も驚いているんじゃない?名前からいきなりメールがきたらさ。」
「うう…。」
同じクラスの山崎君。
保健委員で、いつもきりっとした表情で、会話も淡々としている感じ。
それぐらいしか印象がなかった。
しいていえば総司と仲が悪い?本当それだけ。
なのに。
「ほんと名前は一度火がつくと一気に燃え上がるよね。」
「そうなのー!!!」
そうなのだ。
燃え上がってしまったのだ。
私の山崎君への愛が。