今日俺は非番で、名前と一緒にいた。
「名前、団子でも食いにいかねぇ?」
「いく!」
こいつは本当甘いものが好きだから。
断られることはないと思っていたけれど。
でもそれは俺じゃなくてもだよな・・
俺のこと、なんとも思ってないかな。
外へ行こうとすると、道場で隊士たちに稽古をつけている総司と一君が見えた。
「あ、今日はあの二人なんだね。」
「そうだな。」
「斎藤さんって真面目だよね。副長の指示は絶対だし、でも自分の信念も持っている感じで。」
「うん・・。」
「寡黙だけどそれも素敵。」
「え?」
「総司君はふざけてそうだけど・・。剣の腕はやっぱり一番だよね。あの二人に稽古つけてもらえるなんてすごいことだよね。」
「あ・・あぁ。」
それ以上聞きたくなくて
「ほら、早くいこうぜ!」
「え?あ、うん。」
腕を掴んで足を速めた。
「あ、平助、ちょっと荷物とってくるからここで待ってて。」
玄関で名前が思い出したかのように言った。返事をする前にすでに部屋へ走り出していた。
「あいつ・・ま、いっか。」
玄関のところで待っていると足音が聞こえた。
ただし、1人分じゃない。
「左之さん、ありがとう!」
「たいしたものじゃないけどな、せっかく出かけるんだ。たまにはいいだろ。」
名前の髪には見慣れない簪。
多分、左之さんがくれたんだろう。
「お待たせ平助!左之さんが簪くれた!可愛い?」
「・・あぁ。」
「平助?」
「行こうぜ。」
どんな顔していいかわからなかった。
多分、俺、今不機嫌な顔してる。
見られたくなくて歩きだした。
沈黙を壊すように名前が話し始める。
「実はね、さっき、簪つけていきたくて戻ったんだけど・・手に持ってこっちに来る途中新八さんにぶつかって落として割れちゃったの。そしたら左之さんがくれたんだー。さすが大人の男の人いざって時に贈り物を用意してるのね。」
大人・・ね。
確かに俺は子供だよ。
でも・・。
気が付いたら団子屋だった。
名前は楽しそうに団子を選んでいた。
「平助どうする?みたらし?餡?」
「・・・。」
「平助?」
名前が覗き込んできた。
綺麗な瞳。
小さめな口。
綺麗な黒髪。
白い肌。
誰にも渡したくない。
この気持ちは負けない。
「平助?!」
気が付いたら腕の中に名前がいた。
思っていたより小さくて、柔らかい。
「好きだ。」
「え・・?」
「俺、土方さんみたいにかっこよくないし、総司みたいに強くない。一くんみたいに真面目で寡黙でもないし、左之さんみたいに大人じゃない。新ぱっつぁんみたいに筋肉ない。」
「いや、筋肉は・・。」
「でも、誰よりもお前が好きだ!それだけは絶対に負けない自信がある!だから・・名前・・。」
「なに?」
「俺と・・恋仲になってくれ・・。」
「はい。」
「え?」
少し体をはなす。
だって聞き間違いだと思うだろう?
でも、目の前には笑顔の名前がいた。
「よろしくね、平助。」
「え・・いいのか?」
「うん。だって私もずっと平助が好きだったよ?」
「本当か!?」
「知らなかったの?」
「しらねぇよ・・。」
「確かに大人っぽくないし、絵からでてきたような顔立ちとまでもいかない。総司君より強くないし、斎藤さんとも程遠い・・。」
「それ以上ききたくない。」
俺が肩をおとすとクスクスと名前が笑う。
「でも優しくて、明るくて、いつも私を見ていてくれる平助が大好き。」
大好き。
その言葉が嬉しすぎて俺は名前を強く抱きしめた。
「おめでとう!兄ちゃん!」
「良かったねー。」
「よし、団子まけてやる!」
いつの間にか人だかり。
そういえば外にいたんだ・・俺。
めちゃくちゃ恥ずかしくて。
しかもこの盛大な告白は噂になって他のみんなの耳に届くんだけど。
それでも幸せだから。
終わりよければ全てよし・・だよな。
終