何人か歩いている人達に声をかけ、名前ちゃんの行方を捜した。
数人の男と女の子が町はずれの方へ歩いていったと聞いて僕は走って向かう。
人がほとんどいないような場所に人が住んでいないような小屋があった。
気配を消して近づくと声がする。
沖「…ここかな。」
しばらく耳をすませていても名前ちゃんの声は聞こえなかった。
沖「…。」
少しだけ考えて。
だけどいきなり戸を蹴り飛ばして中に入った。
浪士「何だ!?」
浪士「沖田!!!」
中には十人ぐらいの男達と、
沖「名前ちゃん…。」
床に転がされている名前ちゃんの姿があった。その表情は出会ったときと同じで。
浪士「やっぱり来たな。親しい人間でつれるとは思っていたが…まさか新選組の沖田が自分が殺した相手の妹と仲良くなるなんてなぁ。」
浪士「仲間を殺されて黙ってるわけにいかないんだよ。」
沖「へえ…君達、仲間だなんて思っていたの?」
浪士「ちっ…何余裕な顔してるんだよ。」
浪士「この女も女だな。兄を殺した奴と睦まじく過ごしてるなんてよ。しかもこうして俺たちに連れてこられても泣きも叫びも許しを乞うこともしねえ。本当につまらねえなあ。」
そう言って一人が名前ちゃんの体を軽く蹴った。
それを見た瞬間。
一気に体温が下がった気がしたんだ。
おかしいよね、こういう時は熱くなりそうなもんなのにさ。
そしてすぐ近くにいた浪士を一突きにする。
悲鳴をあげることもできないまま崩れていく姿を見て他の奴らが何か叫びながら刀をぬいた。
浪士「貴様っ!!」
沖「どうしてその子が許しを乞うのさ?」
浪士「何!?」
沖「地面に額をこすりつけて、助けて下さいって許しを乞うのは…君たちだよ。」
本当におかしいよね。
こんな時に笑っちゃうなんてさ。
多分そんな僕を見て何人かは怯えているみたい。正しいんじゃない、その勘は。
でも、もう遅いよね。
沖「ああ…許してと言われたところで。」
――もう無理だけどね。
「沖田さん…。」
名前ちゃんの声が聞こえた時、浪士達は全員倒れていた。
僕は刀についた血を振り払うと彼女の方へと歩き出す。
沖「ごめんね、名前ちゃん。怖かったね。…帰ろうか?」
そう言って近づこうとする僕は何かが動く気配を感じた。
浪士「っ…くそっ…くそおおおお!」
まだ生きていたのか、浪士が起き上がるとふらつきながら刀を構えていた。
沖「…静かにしてればいいのに。」
僕は刀を構えて彼の方を向いた。
なのに。
沖「!?」
浪士が向かっていったのは僕じゃなかった。