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沖「あ。平助君、こっちこっち。」


平「よ。」


同窓会当日。
あれからやっぱり時々考えちゃって。
俺はいっそ早く同窓会が終わってほしいと思っていた。
実際に名前に会えば何かが変わる気がしたんだ。



沖「一君は幹事だから忙しそうだよ。ま、今でもよく会うからわざわざ今日話せなくても全然問題ないけどね。」


平「まあなー。あー腹減った!」


テーブルの上にはバイキング形式の料理がたくさん並んでいた。
もちろん酒もたくさん用意されている。


沖「料理たくさん出てるし、好きなだけ食べなよ。」


平「あったり前じゃん。たくさん食ってたくさん飲む!!!」


沖「あはは、平助君ご飯食べに来たみたい。」


そんな会話をしているとクラスメイトが次々と話しかけてきた。
総司はすぐに女子に囲まれて、笑って話してたけどあれ絶対内心面倒って思ってるよな、あいつ。


俺はしばらく食べることに夢中で、時々話しかけてくるクラスメイトと適当な会話をして過ごしていた。


次は何を食べようかなんて考えていた時。
ぴたりと足が止まった。



あの時、何度も探した後姿が。
今、目の前にある。
髪も服装もあの時とは全然違うのに。




忘れるはずがない。
間違えるはずがない。



平「名前…。」



声をかけると名前はくるりと振り向いた。



 「平助君…。」



笑い方は同じだ。
なのに、化粧と服装のせいか、あの時よりもっともっと可愛くて、もっともっとドキドキさせる。



平「げ…元気?」


 「うん!平助君は元気だった?」


平「ああ。元気。」


やばい。
何を話そう?
突然話すことになった緊張で少しパニックになる。
必死に話題を探していると名前から話をしてくれた。


 「仕事、何してるの?」


平「普通のサラリーマンだよ。名前は?」


 「私、看護師になったの。」


平「すげえ!夢叶ったんだな!」


 「覚えててくれたの?」


当たり前だろ。
お前が話してくれたことは何でも覚えてるって。



一度会話が始まると不思議なぐらい途切れることがなかった。
そういえばあの時は何を話そうっていつも話題を探していたよな。
今は少しは大人になれたのか、あの時よりだいぶ楽に会話ができている。



平「あ、これ美味い。名前食べたか?」


 「え?…ふふっ平助君。」


平「へ?」


 「ここにソースついちゃってるよ。」


ポケットティッシュを取り出して俺の口元をとんとんと拭いてくれる。
あまりにも自然な動作に思わず受け入れたけど…ものすごく恥ずかしくね!?


平「ありがと…。」


 「平助君、変わらないね。」


くすくすと笑う名前はやっぱり綺麗になった。
なのに、俺は…。
ちょっとだけ悔しくて。
少しだけ仕返ししたくなった。



平「名前は変わったよな。」


 「そうかな?」


平「可愛くなった。」


 「え!!?」


言った。
言ってやった。
名前が顔を赤くして目を泳がせているのを見て、少しだけ満足したから。


平「真っ赤。」


 「へっ平助君がいきなり変な事言うから。」


ぷにっと頬を指でつついて笑ってやったんだ。
すると少しだけ口を尖らせて睨みつけてくる。
全然怖くなんかないのにな。
こういうところはあの時と同じだ。
見た目は変わっても中身はたいして変わらないもんなのかもな。

   

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