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出会ったのは高校一年生。
クラスが同じで席も近くて。
名前は口数が多い方じゃないけれどいつも俺の話を笑いながら聞いてくれていた。
その笑顔に嬉しくなって、俺はどんどん話しちゃって。
あ、そうそう。それで土方先生に怒られたっけ。

でも名前は怒られている俺を見てまた笑うから。

怒られるのも悪くないとか思って。


まあつまり。
俺は名前が好きになってたんだよな。


どうにか話せないか話題探したりしてさ。
でも何もできないまま、二年生になった。


二年生はクラスが別々になって。
そりゃもう絶望的だったね。
わざわざ名前のいるクラスに行くために、用もないのに総司のところに行ったりしたっけ。
総司は事情を知っているからニヤニヤしながらいつも俺をからかってた。


そんな感じで頑張っていた俺を神様は見ててくれたんだろう。
三年生は同じクラスになった。
だけど、その努力を見ていたのは神様だけじゃない。


クラスメイトの一部も知ってて。
で、完全に冷やかされた。
三年生にもなって相合傘書かれるとかねえだろ。
名前は笑ってたけど本当はどう思ってたんだろうな。
ごめんなって言葉しか言えない俺が本当に情けなかった。









一つ思い出せば次々と浮かんでくるあの頃。
本当に何で俺はあの時。


好きの二文字を伝えなかったんだろう。


あんなに近くにいたのに。
あんなに大好きだったのに。


その関係を壊すのが怖くて?
嫌われるのが耐えられなくて?


手を伸ばせば届く距離に居たのに。


あの時に思いを伝えていたら。
今は変わっていたんだろうか。
あの時にちゃんと好きと言っていたら。









パタンとアルバムを閉じて元の場所に閉まった。






今更…だよな。







でも、もしかしたら名前も同窓会に来るかもしれない。
そん時俺は、どんな感情になるんだろう。


懐かしいなとか言っちゃって。
元気だったかとか笑って。
意外と普通に過ごせるんかな。


そうだよ。
普通に過ごせるって。
この五年間がそうだったんだ。


そう思うのに。


そう思いたいだけ…って心が言っている。
何だよ、そんなの。
今まで思い出すこともなかったじゃねえか。



平「…情けねえな。」


あんなに毎日が楽しくて、ドキドキしてたのは。
あの時だけだったんだ。




あいつにとって俺は。
どんな存在だったんだろう。
こんな風に思いだしてくれることがあるんだろうか。
あいつの中に少しでも俺はいられたのかな。










一君からの了解の一言と、同窓会の会場の地図が添付されたメールに気付き、俺はカレンダーにメモをした。



平「…飯でも食うかー。」



俺は再び携帯を放り投げると食べ物を探しにキッチンへと向かった。


だけど。
何を食べても何を飲んでも。
あまり味がしなくて。


もやもやする感情を忘れたくてすぐに布団に入った。
朝起きて仕事に行けば。
きっとすぐに忘れるはずだ。
そう信じて。

   

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