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基本的に通院はしているけど検査などをするために一年ぶりぐらいの入院になった。
予定では二週間ぐらいだ。
今までは憂鬱の二文字でしかなかったこの時間が今となっては幸せの時。



かなりストレートに思いを伝えているつもりなんだけどな。
まだまだ子供扱いされてて全然聞いてくれない。
どうすれば振り向いてもらえるのかな?



千「名字さん。点滴外しますね。」


 「あ、雪村さん!」


雪村さんはいつも優しく話を聞いてくれる素敵な看護師さんだ。
多分年はそんなに離れてないんだけど憧れるな。



千「体調はどう?大丈夫?」


 「はい。大丈夫ですよー。」


千「今日も土方先生と楽しそうに話してましたね。」


 「あはは…あれを楽しいととっていいのか。」


怒鳴られてるだけなんだけど。
看護師さん達から見たらおもしろいのかな?



千「名字さんは土方先生が大好きなんだね。」


 「…ええ!?!?」


千「え?違うの?」


 「あ…いや…その…。」


それはそうなんですけど。
周りも知っているとは思っていますけど。
ストレートに言われると恥ずかしい…。



千「ふふ。今度またゆっくりお話したいな。」



 「あ、はい。」



雪村さんは優しく笑うと点滴を持って出ていった。



点滴も外れて自由になった私は夕食までの時間をふらふら散歩することにした。
今日は調子も良いし、まあ…見つからなければ大丈夫でしょ。



庭にでも行こうかなと廊下を歩いていると遠くに土方先生の後ろ姿。



 「あっ!先生発見!!!」



駆け寄ろうとした時思わず足が止まった。


土方先生が誰かと話していた。
よくよく見ると雪村さん。
きっとお仕事の話をしてるんだと思うけど。



看護師「あの二人って付き合ってるのかしら?」


看護師「え?そうなの?」



私のすぐ近くにいた看護師さん達が呟いた一言に私の心は真っ暗になった。


もう一度ゆっくり視線を二人にうつす。
雪村さんが楽しそうに笑っていて。
土方先生も柔らかく笑っていた。


先生ってあんなふうに笑うんだ…。


私は怒ってるところばっかり見てたよ。


あんなふうに笑うのなんて。


知らないよ。


それ以上そこにいることができなくて。
一歩、二歩後ずさりをして踵をかえすと病室に戻った。

   

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