沖「ねえ、名前ちゃん。」
「ん?」
沖「どこか痛いの?」
「何で?」
沖「苦しいとか、つらいとか、そんな感じ?」
「そんなことは…。」
沖「だって、つらそうな顔してるから。」
がたんと沖田君が立ち上がって、私の横に立った。
座ったままの私は見上げる形となる。
沖「…勘違いだったらごめんね。僕に好きな人がいるって言ってから苦しそうな顔になったから。自惚れかもしれないけど僕のこと好きなのかなって。」
「私が?」
沖「多分それが。好きって気持ち。」
沖田君の手が私の頭に伸びる。
さらさらと髪を梳かれて心地よい気分になった。
沖「嫌じゃない?」
「うん。」
沖「そっか。」
沖田君はそう言って笑ってくれた。
その笑顔に胸がざわめいた。
ふわふわ浮いているような、
だけどドキドキと鼓動が脳まで響く。
息をするのも忘れるぐらい。
目が離せない。
沖「名前ちゃん。」
「何?」
沖「好きだよ。」
頭にあった手は私の頬へと移動していた。
沖「好きだよ。」
「何で?」
沖「好きになるのに理由なんてないじゃない。」
「そっか…。」
沖「君といる時間は心地よかった。君との会話は楽しかった。君のことを目で追っていた。もうこれで十分じゃない?」
「うん…。」
沖「最初に目を逸らされた時から、気になっちゃったみたい。」
「あ…あの時はごめんね。」
少し意地悪そうに笑う沖田君に思わず目を逸らすと彼は私の耳元で囁いた。
沖「名前ちゃんが勉強を教えてくれたから。これからは僕が。」
――恋を教えてあげる。
私の苦手を克服するため。
彼と一緒の時間はまだまだ続くようだ。
そして願わくば。
一生続きますように。
終