自習室は図書館と違って話をしても良いってことになっている。
テストも終わったばかりで自習室には誰もいなかった。
沖「君も大変だね。土方先生に無理やり言われたんでしょ。」
「まあ。でも沖田君のこと心配してたよ。」
沖「あの人は勉強しろだの部活にでろだの昔からうるさいからね。母親みたいだよね。」
そこで父親と言わず母親と言う彼に心の中で笑ってしまう。
だって土方先生確かにお母さんみたいなんだもん。
「意外だったな。勉強なんてしたくないっていうかと思った。」
沖「そりゃそうだけど。そうしたら君に迷惑かけるじゃない。」
さらりとそういうことが言えるからこの人女の子にもてるんだろうななんて思わず見つめる。
きゃーきゃー言ってる彼女達はきっとこういうところが好きなのだろう。
「じゃ、始めようか。何からする?」
沖「うーん。数学?」
まずはテストで間違った問題を解き直すことから始めた。
私が教えて彼が解き直す。
それの繰り返しをしていてわかったけれど土方先生の言った通り。やればできるタイプらしい。
「沖田君、勉強得意なんじゃないの?」
沖「嫌いじゃないんだよ。本当は。だけどね、面倒なの。そういうときもあるでしょ。」
視線はノートに落としたままさらさらとペンを動かす彼は赤点をとっている人物とは思えなかった。
その後も他の科目を解き直したが特に詰まることもなく彼は全て解き終えた。
「なんだか、私は別に必要ない気がする。」
沖「そんなことないよ。名字さんの教え方わかりやすいから。とりあえず一週間は付き合ってもらえないかな?うるさい人がいるからね。」
そう言って笑う沖田君にこちらもつられて笑う。
沖「あ、笑った。」
「え?」
沖「僕と話している時はずーっと真面目な顔してたから。ねえ、名前ちゃんって呼んでいい?」
名前。
知ってたんだ。
「いいけど…。」
沖「じゃあ明日もよろしくね。名前ちゃん。」
その日から私と沖田君の放課後勉強会が始まった。