先生のとなり | ナノ
 甘くないバレンタイン

センター試験も無事に終わり、次は国立大学の前期試験。
必要な科目が一気に減り、私は少しリラックスしつつ勉強に励んでいた。
というのもセンター試験の結果が良かったから。


「頑張ったじゃねえか。」


私の自己採点結果を見て土方先生は嬉しそうに言ってくれた。
その笑顔にただの嬉しさだけじゃなくて、ドキドキも入っていることをもう否定することはやめた。
私…好きになっちゃったんだ。先生のこと。


でもどうすればいいんだろう。
ただでさえ年が離れていて相手になんてされないだろうに。
相手は先生で、私は生徒で。
どうしたら少しでも…気付いてくれるのかな?



「ねえねえ沙織ちゃん。」

「ん?」


考え事から現実に引き戻してくれたのは沖田君だった。
センター試験終了後、自習が増えた授業は少しぐらい雑談をしていても文句を言われなくなった。とはいえ騒ぐことはできないけれど。


「もうすぐバレンタインだよね。君はお菓子とか作れるの?」

「バレンタイン…。」

「あれ、忘れてた?ざーんねん。貰おうと思ってたのに。」

ニッと笑いながらわざとらしく頬杖をついた。
私なんかから貰わなくても毎年ものすごい量のチョコ貰ってるのに…。
沖田君甘党だから嬉しい行事なんだろうな。


「そっか…バレンタインか。」

「本当に忘れてたの?まあいいか。あ、僕クッキー食べたいな。」

「作るなんて一言も言ってないんだけど…。」

「甘さ控えめ。」

「え?沖田君甘いの大好きじゃん。」

「土方先生は甘いの嫌いだから。チョコは無理だろうしクッキーならいけると思うよ。」

「え!?」


何で?
何で沖田君…そんなこと言うんですか!?


「あげないの?」

「え?なんで…私が先生に?」

「なんだ、仲良くしてるからさ。てっきりあげるのかと。あの人も毎年大量に貰ってるからね。」


ああ、そういうことか。別に私の気持ちに気付いてるとかそういうことじゃない。
確かに先生にはお世話になってるし、渡そうかな…。


「でも土方先生全部断ってるんだけどね。お返しが面倒なんだろうけど。」

「そうなんだ…。」

「新八さんや左之さんはぜーんぶ受け取るから二人にあげる子はいいけどね。」


貰えるなら貰えば良いのに意味わかんないよとか呟きながら沖田君は自習に戻った。
私も目の前の問題に戻ろうとしている…んだけど。


バレンタインをどうするか、それが頭から離れない。
作ることはいい、そこに躊躇いはない。
だけど…全部断ってるんだ。
頑張って作って受け取ってもらえなかったらそれはそれできついかも…。
でもお世話になったし、作りたいな。


(どうしよう…。)


前期試験前でそれどころじゃないはずなのに。
恋ってこんな風になっちゃうんだ。
自分で自分がなんとかできないなんて、こんなに怖いことはない。

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