先生のとなり | ナノ
 初めての温度

「土方先生いらっしゃいますか?」

職員室へ入っていつも見える後姿がない。
放課後だからてっきりここにいると思ったのに…。
推薦入試の面接の練習をしてもらおうと職員室に来たんだけどすれ違ったみたいだ。


「沙織ちゃん。どうしたー?」


ドアの所で立ちつくす私に声をかけてくれたのは永倉先生だった。


「面接の練習をしてもらおうと思ったんですけど…。」

「あー土方さん校舎の見回りじゃねえかな。そのうち帰ってくるから待ってていいぜ?」

「あ、じゃあ一度教室に戻ってまた来ます。少し予習してきます。」

「そうか?寒くなってきたから無理すんなよ。ここはあったけえからな。」

「はーい。」


永倉先生にお礼を言って職員室を後にした。
教室に戻ろうとした時、ふと階段が目に付いた。
校舎の見回りって言ったよね…。もしかして。


私は階段をのぼりはじめる。
行き先はもちろん屋上だ。


何故かわからないけれど入学式のことを思い出したんだ。
先生、あそこにいるんじゃないかな?


トントンとリズムよく階段をのぼり、屋上に辿りつく。
ドアノブに手をかける…と案の定、鍵はかかっていなかった。
なるべく音をたてないようにドアを開ける。


(やっぱりね。)


そこには煙をくゆらせている後姿があった。
あの時と、同じ、後姿が。


「校長先生と沖田君に言いますよ、先生。」

「!?」


私の声に肩をびくりと震わせ、先生が振り向く。
声の主が私をわかって安心したのか、なんだお前かって表情でそのまま煙草を吸い続けていた。


「校内で煙草吸うとか不良教師ですね。」

「見逃せ。吸う場所ねえんだよ。」

「禁煙したらどうですか?体にいいし。」

「無理言うな。」

「私煙苦手です。」


そう言うと先生は携帯灰皿に煙草を突っ込んだ。
…悪かったかな?


「何か用か?」

「面接の練習してほしくて。」

「わかった。後少し待ってくれるか?」

「??」


先生は屋上の柵にもたれかかるようにして座り込んだ。
私も隣に座る。
秋の風が少し冷たかったけれど先生の隣にいるってだけで体温が上がる気がした。



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