先生のとなり | ナノ
 相合傘は無記名で

「沙織ちゃーん。」

「ん?」


お昼御飯を食べ終わり午後の授業が始まるまでのんびりしていようと思った時のこと。
すっかり涼しくなってきて過ごしやすいから昼寝もいいななんて考えていたんだけどいきなり沖田君に話しかけられた。


「トリックオアトリート!!」

「…はい?」

「ハロウィンだよ、ハロウィン。お菓子くれなきゃイタズラするぞ。」

「…はい、飴。」

「ええ!?持ってるの?つまらないなあ。」

そう。今日はハロウィンだった。
朝から他の友達にも同じこと言われたからポケットに飴をいくつか準備していたんだけど…やっぱり君はやるのね、沖田君。


「イタズラやだもん。沖田君のえげつなさそうだから。」

「失礼だな。どういう意味。」

「そういう意味。」

「僕だって相手を選ぶよ。もうすでにイタズラした人はいるけど…。あ。」


廊下からものすごい足音が聞こえる。
それも間違いなくこの教室に近づいてくる音だ。
前方のドアが開くと同時に沖田君が私の腕を引いて後方のドアから飛び出した。


「総司ぃぃぃぃ!!!」

「もう来ちゃった。はやいなあ。」

「え!?ちょっと沖田君!?何したの!?何で私を連れてくの!?」

「君がいたほうが捕まった時に怒られ度が減るでしょう?」

「ま…巻き込まないでよ!」

「こら!総司!香坂!!!」


後ろから追いかけてくるのは土方先生。
そして名前を呼ばれたということは…巻き込まれたんですね、私は。


「ほら、逃げないと鬼がくるよ。鬼が。」

楽しそうに笑ってる沖田君はいいよ。君は足が速いんだから!!!
でも後ろから追ってくる先生の殺気がすごすぎて私も全速力で彼についていった。
どんどん階段を上って屋上の方へ…。


「僕こっち、君そっち。」

「え?」

そう言うと沖田君は屋上へ上がる階段を前に廊下の方へと方向転換していった。
特別教室があるそっちの方が逃げる場所多いじゃん!!!
とか思ったけど私も止まるわけにもいかないしそのまま屋上の方へ。

屋上へ続くドアは案の定開いていなくて。
私は手前の階段に腰を下ろした。
息が切れる。こんなに走ったの久しぶり…最近体育も球技だったし。


まだ午後の授業まで時間あるし、もう今日はここでのんびりしよう。
なんとなく壁に目をやるとそこにはたくさんの相合傘が書かれていた。
古いものから新しいものまで、カップルもあるけれど友達同士で書いたんだろうなっていうのもある。

そういえばここに相合傘かくとずっと二人は仲良くいられるっておまじないがあったな。


「ずっと…仲良く…。」


ここに書いたら、ずっと関係が続くんだろうか。
先生と…。
…って何馬鹿なこと考えてるの。何、先生とって。
卒業したら大抵はいさよならだから!
それに…おまじないなんて…所詮気休めにしかすぎないし。
非科学的。


ああもう。
教室でのんびりしたかった。少し肌寒いよここ。
でももうしばらくは隠れてないと先生が…。


「香坂。」


隠れるどころか速攻で見つかった。

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