先生のとなり | ナノ
 大人の階段

今日から冬休みで、しかもクリスマスイブ。
彼氏彼女のいる人は受験生とはいえこの日ぐらいは遊ぶんだろうな。
いつもの私なら何の関係もない日か、家族とご飯を食べるぐらいのことしかしてなかったけれど…。

まさか今年。


「寒くねえか?風邪ひけねえんだ。ちゃんと着てきたんだろうな。」

「も…もちろんでございます。」


先生と一緒に、しかも先生の車の助手席にいるとは誰が想像できただろうか。

何でこんなことになったんだっけ…。
あ、そうだ。私が推薦落ちて、報告したら息抜きしろって言われたんだ。
でもさ、普通息抜きって家族とか友達とかとするよね。
なんだか流れで先生と出かけてるけど大丈夫なのかな??
誰かに見られたら…。


「お前行きたいところあるか?」

「え?あ、えーっと…。」

「特にないか?」

「はい。あの、すぐに思いつかなくて…。」

「少し遠出するけど大丈夫か?この辺だと生徒がいるかもしれねえからな。」


そう言って先生は車を走らせる。
何だか…デートみたいじゃん。

「お前いつもと雰囲気違うな。」

「え!?」

「私服だからか?髪型も違うような…。」


先生と出かけるなんて言えなくて、でもクリスマスイブに出かけるなんて家族には何かあると思われる。
特にお姉ちゃんの食いつきは半端なかった。
誰と出かけるとも言わなかったけどニヤニヤしながらデートなんでしょを連発。
あれよあれよといつもは着ないようなワンピースを着せられ、少し髪も巻かれ…。
これじゃ私がものすごく気合い入れてるみたいじゃない!!!と逆に焦り、ギリギリのところで服だけは変えた。…スカートははいてるけど。


「いつもは制服ですから。先生もスーツじゃないからいつもと違いますね。」

「そうか?」


運転している先生…大人って感じがしてものすごくかっこよかった。
自分の気持ちに気付いてからドキドキするのを抑えるのが大変なのにこんなことになるとは。

しばらく車を走らせ先生は駐車場に車を停めた。
海沿いの道を歩ける大きな公園だ。


「寒いから長時間はいられねえが、たまには散歩もいいぞ。」

「冬の海もいいですね!!」

少しだけ風が冷たかったけれど先生が隣にいるだけですでに頬が熱いからちょうどいい。
ここから少し行ったところにカフェがあるらしく昼はそこで食べることになった。


何だか本当にデートみたい。
今日ぐらいは…いいよね。


「わっ!」

「馬鹿やろ!」


浮かれ過ぎていたのか何もないところで躓いてしまう。
ギリギリのところで先生に腕をひかれて助かるけど反動で先生に体当たり。
もちろんそれぐらいで先生はびくともしないけど…


「!」


ち…近い。
少し見上げれば先生の綺麗な顔があって。
間違いなく今私の顔は赤い。


「?」


もう大丈夫なのに先生は腕を離さなかった。
それどころか立ち止まったまま。
至近距離で見つめ合って、私の心臓は破裂しそうだ。


先生…?
何で、離してくれないの?


一瞬、先生との距離が縮んだ気がした。
反射的に目を閉じてしまう。
あるわけないのに何故か…

キスする気がした。



「…大丈夫か?」

「は、はい。」


先生の声にすぐ目を開ける。
そこには少しだけ心配したような顔をした先生。


「足、くじいてないか?」

「はい。」

「ったく、ヒールなんて履くからだぞ。」

「たまには…いいじゃないですか。」


こつんと頭を軽く叩かれ私達は再び歩き出した。


「そろそろ寒いか?店行くか。」

「はい。」


あの何とも言えない間はなんだったんだろう。
私の勘違いに決まってるけど、あの時の空気はいつもと違う気がしたんだ。


大人の階段


ヒールぐらい履かせてよ。
少しでも先生に届きたい。
大人の階段、のぼりたいんだよ。

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