先生のとなり | ナノ
 察しろって無理な話

玄関を開けて俺は目を丸くした。
さっきまで考えていたやつが目の前にいるんだからな。


「先生。おかえり。」

「…どうした?何かあったか?」

「ううん。先生が帰ってきたのが音でわかったからさ。これどうぞ。」


そう言って香坂が差し出したのは何かが入ったタッパーだった。


「今日肉じゃがたくさん作ったの。先生今からご飯作るの大変かなと思って。あ、食べなかったら捨てていいし。」

「いや、貰う。何も作る気しなかったところだ。」

「最近帰り遅いんだからちゃんと食べなきゃだめですよ。じゃあおやすみなさい。」


香坂は俺にタッパーを押し付けるように渡すと隣に戻って行った。
俺はまだあたたかい肉じゃがを持ってリビングに戻った。
米を解凍しテーブルについた。


「人の心配してる場合じゃねえだろうが。」


何ガキに心奪われそうになってんだよ、俺も。
胃袋掴むってあながち間違ってねえから怖え。


隣から聞こえる賑やかな笑い声に安心しながら、
俺はもらった肉じゃがをかみしめた。


察しろって無理な話


あいつは何とも思ってねえんだろうな。

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