先生のとなり | ナノ
 強がってなんかない

「悪かったな。総司、香坂。」

「本当ですよ。土方先生。僕ら受験生なんですよ。」

「てめえは帰っても勉強しねえだろうが。」

「ふふっ。確かに。」

放課後。私達は土方先生に頼まれて資料整理を手伝っていた。
明日使う古典のプリントだったんだけど先生がすっかりまとめるのを忘れていたらしい。
受験生を受け持っていると忙しいだろうからな。

「じゃ、帰ろうかな。」

「私も…。」

先生に軽く会釈をし、私と沖田君は職員室を後にした。
するとほぼ同時に沖田君と私の携帯がなる。


「もしもーし。…平助?うん、うん。ああ、いいよ。今から行くよ。」

彼はどうやら電話だったらしい。
私の方はメールだ。お母さんかな?
メールを開く前に沖田君が電話を切った。


「ごめんね、送ってあげたかったけど呼びだされちゃった。」

「ああ、いいよ。まだ夕方だもん。」

「とはいえ、ちゃんと明るいところ帰るんだよ。」


ぽんぽんと私の頭を叩いて彼は下駄箱の方へ歩き出した。
…もう、私同い年なんだけど。
私はとりあえずメールを確認する。


「え?」


差出人は土方先生だった。


――少しだけ待ってろ。送る。


短くそれだけ。
先生もう帰れるのかな?まあ帰る場所が同じだから送ってもらうのはいいんだけど。
先生のことだから仕事たまってるのに私を残しちゃったから送ろうとしてるんじゃ…。
廊下から外を眺めると綺麗な夕焼け色に染まっている。
まだ明るいし、送ってもらうほどじゃないよね。


――大丈夫です。一人で帰れますからご心配なく。


それだけ打ち込むと私も下駄箱へ向かった。


とはいえ、この前変質者に遭遇したんだし、なるべく人通りの多いところを歩こう。
そう思って私はぎりぎりまで賑やかな大通りを歩くことにした。
ここなら人も多いし明るい。
今日のご飯は何にしようかなんて考えていると後ろからぽんと肩を叩かれた。


「?」

振り向くとそこには知らない男の人が三人。
見たところ大学生ってところかな。


「何か?」

「ねえ、今から遊びに行かない?」

「薄桜高校の制服だよね。俺達の友達、そこ通ってたんだよねー。」

「カラオケいこうよ、カラオケ。」


これ、ナンパ?
大学生って暇なの?


「いえ、行きません。それでは。」

「ねえねえそう言わないでさ。」

「俺達暇なんだよ。」

私の腕をがっつり掴んで離そうとしない。
周りの人も面倒事に巻き込まれたくないのか見て見ぬふりだ。


「私は忙しいので。他を探してください。」

「俺けっこう強気な子、好きなんだよね。」

次は肩に手をまわされる。
いよいよ気持ち悪い…どうしよう?
しかもぐいぐいと細い道に引っ張ろうとしている。

一瞬、先生の顔がよぎった。
ポケットから携帯もすぐに取り出せる。
…だけど。


迷惑かけたくないよ。


「ね、全部奢ってあげるからさ。」

「いこいこ。」

「…離して!!!」

「あーもう面倒だから連れていこうぜ。」

「はーなせっ!!!」


引っ張ろうとする手をぶんぶん振っているのに全然離してくれない。
もうこうなったら悲鳴でもあげるしかないと思った時だった。



「おい、おまえら。」


誰か助けてくれた!?
声のする方を見るとそこには…意外な人がいた。

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