▼ どうせ可愛くないよ
「そろそろご飯食べようかな…。」
気がつけばもう夕方になっていた。
休みの日は時間の感覚がなくなっちゃうんだよね。
「何にしよーかなー。」
今日はお母さん夜勤だし、隼人は合宿でいないし、お姉ちゃんもサークルの人と飲みに行くとか言ってたから多分遅い。
一人分って楽なようで面倒なんだよね。
「明日も食べられるし、カレーにしちゃえ。」
材料を手に取りさっさと調理を開始する。
カレーって何て簡単なんだろう。そりゃ一から作れば大変だろうけどルーを使えばほぼ失敗することなんてない。
調理し始めてから三十分。
「よし、あとは煮込むだけ〜。」
私は弱火にして蓋をするとリビングへ戻った。
さて、しばらくテレビでも見るかなと思った時のこと。
あいつが…現れたんだ。
「っ…きゃああああああああああああああああああああああ!」
窓があいてるとかご近所に響き渡るとかそんなこと考えている場合じゃなかった。
だってだってあいつが…あいつがいるなんて!!!
「どどどどどうしよ…やだどうしよう!?」
一人動くこともできず、かといって逃げることもできなくて。
私は凍りついたように立ち尽くすしかできなかった。
――ピンポーン
――ドンドン!!
全く動けなかった私の足がびくりと動いた。
チャイムの後にけたたましくドアを叩く音。
「だ…誰?」
ゆっくり玄関の方を振り返ると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「おい!香坂!何があった?!どうした!?」
「せ…先生!?」
どうやら私の悲鳴に反応して先生がとんできてくれたらしい。
私は藁をもすがる思いで玄関にダッシュした。
「せ……先生助けて!!!!」
「どうした!?」
ドアを開けてそう叫ぶと先生は慌てて私を引き寄せた。
そしてすぐに自分の後ろにやると室内を見ている。
あ、もしかして誰かいると勘違いしてる…よね?
「あの…先生、実は。」
「?」
私は悲鳴をあげたわけを話した。
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