先生のとなり | ナノ
 若気の至りで済みますか?

「で、何で僕と沙織ちゃんまで巻き込まれてるんですか。」

「…そうですよ。」


永倉先生の授業が終わって、私と沖田君は放課後職員室に呼び出された。
今日は図書館に寄ろうと思っていたのに。


「授業中に寝ている新八も新八だが起こさないてめえらもてめえらだ。」

「だーかーら、何で僕と沙織ちゃんだけなんですか。それなら全員連帯責任でしょ?」

「総司。てめえは暢気に新八の寝てるところ写メにおさめてただろうが!香坂もプリントが終わってたんならさっさと起こせ。授業させろ!」

「ええ!?ってかもともと永倉先生が寝てるのが悪いのに!!」

「す…すまねえ二人とも!!俺のせいだ!!」


土方先生の前に私と沖田君は座らされた。
永倉先生に至っては椅子も用意されず床に正座だ。


「ったく新八!授業中に寝るなんてどういうことだ!!!てめえまさか夜までギャンブルしてたとか言うんじゃねえんだろうな!」

「ちっ違う!俺は…俺は…。」

「…永倉先生?」

「新八さん?」


永倉先生の眉がハの字になり、みるみる涙目になっていく。
するとそれまで何も言わなかった原田先生が横から口を挟んだ。


「その辺にしておいてやってくれよ土方さん。こいつ昨日狙ってた女の子にふられちまったんだよ。」

「あーそれはお気の毒ですね、新八さん。でも女の人なんて星の数ほどいるじゃないですかー。次いきましょ、次。」

「うるせえ総司!お菊ちゃんは一人しかいないんだーーー!」

「仕方ねえだろ新八。あの子には彼氏がいたんだから。」

「わかってる!うう…左之も総司も土方さんも黙っていても女がよってくるからわかんねえんだああああ!!!」


ああ、本格的に永倉先生が荒れ始めた。
原田先生は苦笑い。沖田君はがっつり大笑い。土方先生は深いため息。
でもちょっと可哀想だよね、永倉先生。失恋しちゃったのか。


「あの、永倉先生?また良い人が現れますよ。永倉先生の真っすぐで生徒思いな所をわかってくれる人。私先生の授業楽しいから数学好きですよ?」

「…沙織ちゃん。」


何て言っていいかわからなくてとりあえず精一杯の慰めをしたけれど。
永倉先生はより目をうるうるさせて私の方を見た。


「沙織ちゃーーーーん!君は天使か!?もしかして運命の人は君か!?」

「ええええ!?」


ぎゅっと永倉先生に抱きしめられてパニックになる。
嫌とかじゃないけど…痛いです!!!!


「いてええ!」


私が痛いと叫ぶ前に永倉先生の悲鳴が聞こえた。
と、同時にふわっと解放される。


「しーんーぱーちー…大概にしろよ。てめえ。」


見上げると土方先生が鬼の形相で立っている。どうやら思いきりゲンコツを落としたらしい。
…土方先生、永倉先生が動きません。

「大丈夫か?」

「あ…はい。」

心配そうな顔して聞いてくる先生、ギャップがすごすぎます。
大丈夫ですよセクハラとか言いませんから。


「あーあ、新八さん可哀想。土方先生手加減してあげないと。女の子には優しいのにねぇ。」

「ばか、総司。女に優しくするのは当然だろうが。土方さんだって男だからなあ。」

「ふーん。僕はまだよくわからないけど大人は大変ですね。」

「お前…女とっかえひっかえしてたらただじゃすまねえぞ。」

「怖いよ左之先生。大丈夫。まだ高校入ってから十人ぐらいしか付き合ってないから。」


いや、怖いのあなただよ沖田君。
十人って…そんなもんじゃないでしょ、実際。


「お前なあ…。」


しかめ面の原田先生に余裕の表情で笑っている沖田君ってすごい。いろんな意味で。


「土方先生は高校生の時どうでした?硬派に一人だけーってタイプじゃないでしょ、どうせ。」

「ああ?まあお前ぐらいの時は…お前と同じぐらい…。」


ええええええ!?土方先生!?
沖田君と同じような生活してたの!?

「…最低。」

思っていた言葉が思わず零れおちた。
これじゃ永倉先生のほうが断然マシだと思う。

私の言葉に沖田君、原田先生、そして土方先生が目を丸くした。


「モテる人って怖いですね。とっかえひっかえって…。最低。」

「ち…違う!」

「まあ若い時に色々経験つまないとねー。」

「俺はそういうことはできねえな。一人に全力だからよ。」

否定しようとする土方先生を遮るように沖田君が飄々と言いやがった。
原田先生、何気に自分だけ逃れようとしてますよね。

「それにしても本当に土方先生も僕みたいな感じだったなんて意外だなー。」

「わ…若気の至りってやつで…。」

「若いとか大人とか関係ないです。最低。」


男の人ってみんなそうなのかな。
怖い。やっぱり怖い。
土方先生が優しそうとか思ったの間違いだった。

「違うんだ香坂!あの時は俺も馬鹿で…。」

「今でもモテモテですよね、土方先生。」

「総司黙ってろ!」

何故か慌てている土方先生に、それをからかう沖田君。
そんな二人を無視して私は永倉先生の様子を見ることにした。
原田先生が永倉先生の気絶を確認した後、保健室へ連れていくことになり…。

私は軽蔑の眼差しを土方先生と沖田君に送って職員室を後にした。


若気の至りで済みますか?


あーあ。
勉強しよ。

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