「これはライチ!こっちはアカシア!!」
「…うん。で?」
「こっちは龍眼!!これ美味しかったの。」
「何だかすごい名前だね。…それにしても買いすぎじゃない?」

黄金色に輝く瓶を両手に持って見せつけてくる雫はニコニコと満足そうな笑みを浮かべていた。紅茶を飲もうとする僕を制止して話し始めたのだからきっとその液体を紅茶に入れろということなのだろうと思い待っていたのに彼女は瓶を開けるそぶりを見せない。

「紅茶に入れろってことじゃないの?飲んでいい?」
「あ、そうだったそうだった。紅茶ならアカシアかな。龍眼もいいと思うけど。」
「じゃあ適当にお願い。ねえ、砂糖じゃだめなの?」
「総司わかってない!」

ドンと音をたててはちみつが入った瓶をテーブルに置く雫の目は真剣だった。思わず口を噤むと彼女は瓶を開けて僕のカップにはちみつをいれていく。
とろりとしたそれは魅惑的に見えた。甘いものが好きということもあるけれどそれだけではない惹きつけられる何かから目を逸らして僕は視線を雫に戻す。

「はちみつはね、砂糖より甘みを強く感じるのにカロリーは低いの。美容にもいいし、便秘にもきくって!」
「って店員さんに言われて買ったわけか。」
「う…。総司の意地悪。」
「ははっ。冗談だよ。いただきます。」

紅茶だけの時とは違いふわりと甘みが口に広がって思わず口角が上がった。そんな僕を見て雫が嬉しそうに笑うから単純な彼女も悪くないと思ってしまう。

「それから料理にも使えますーってことではちみつ使ってパウンドケーキ焼いたよ。」
「それはいいね。美味しそうじゃない。雫、お菓子作りは本当得意だもんね。」
「お菓子作りはじゃなくてお菓子作りもって言ってほしかったんですけど。」
「ごめんごめん。」

僕の言動で一喜一憂しちゃうところが本当に可愛いんだけど、どうせならやっぱり喜んでいてほしいし、何より一番好きな顔は。

「ねえ、雫。はちみつって保湿効果もあるんだよね。」
「うん。よくリップとかパックとか使われてるし…何で?」

僕ははちみつの入った瓶を掴むとスプーンで少しだけ掬い取り指にそれを乗せた。そしてすばやく雫の唇になぞるようにつける。

「んん!?」
「リップ代わりにいいと思うよ。甘くておいしいし。」
「おいしいって…リップは食べないし、さすがにはちみつ直接塗るのはべたつ…。」

ちゅっとリップ音をたてて僕は彼女にキスをした。ぺろりと一舐めするのはご愛敬。
ああ、僕の一番好きな雫の照れた顔が見られたから、はちみつも良いものだななんて。そんな単純なことを考える日曜日の午後。




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