君と私の関係。

幼なじみ?

同級生?

どちらも正解。


「平助ー。今日はうちでご飯だってー!」

「了解ー!部活終わったら行くわー。」


窓から剣道場へ向かう平助を見つけて声をかける。
周りに聞こえても問題ない。彼と私が幼なじみなのはだいたいの人が知っている。
最初は付き合ってるのかと色々周りから聞かれたものだけど違うと答えればあっという間に広がって。今では平助のファンから手紙やプレゼントを渡してくれと言われる始末。

平助は小さい頃からいつも一緒で家族といえば家族だし、でも違うといえば違う。
きっと誰よりも私が平助のことをわかっているし、私のことを一番わかっているのは平助だ。
家族でもないし他人でもない不思議な絆で結ばれている。

それ以上でもそれ以下でもない。

「雫?」

「え?」

彼がいなくなったというのにいつまでも外を眺めていた私に友人が声をかけてきた。
どうやら帰ろうということらしいのだがどうも足が動かない。

「あ、私課題やってから帰るから先帰ってて?」

「そう?わかったよ。また明日ねー。」

バイバイと手をふり私は誰もいなくなった教室でため息をついた。

何を…考えていたのか。
最近平助のことを考えている時間が増えた。
あいつは何も変わらない。お互いの家は相変わらず行き来するし、一緒に課題をやったりゲームをしたりと小さい頃から変わらない。
友達は異性の幼なじみなんてなんとなく話さなくなるって言っていたけれど私達にそれは訪れなかった。
多分、もう一緒にいるのが当たり前すぎて照れるとかそういう感情も生まれなかったんだ。
つまりそれは。

恋愛感情というものが全くないということだ。

別にそれでかまわない。平助とはずっとこれからもこんな風に一緒にいたい。
だけど。

いつか私にも平助にも誰か大切な人が出来て、そうしたら…。

もう一緒にはいられないのかな。




「やばい!もうこんな時間!」

あれから私はずっと教室にいて、気が付いたら時計は六時を過ぎていた。
外は見事なオレンジ色になっていて部活をしていた生徒達さえ帰っている。

慌てて校門を出るとそこに見慣れた後姿を見つける。

「平助!」

私の声に気がついた平助はくるりと振り向くと目を丸くして足を止める。

「雫。どうしたんだよ、帰ってなかったのか?」

「うん。ちょっとね…。」

「どうかした?」

平助は鋭い。私のことに関しては誰よりも些細な変化に気がつく。
きっと今も私が何かに悩んでいることに気がついたんだ。

「うーん…。」

「なんだよ、言ってみろって。」

二人並んで帰るのも小さい頃から変わらない。
平助はこれからもこんな二人でいたいとか思ってくれてるのかな。

「私と平助って幼なじみじゃん?」

「うん。」

「家族と言っても過言ではないぐらい一緒じゃん。」

「そうだな。」

私の言葉に相槌をうつ平助は何を当たり前のこと言ってるんだという表情で。
それにほっとする自分がいる。

「うちらって中学ぐらいでも特に意識もしないでこのままでさ。周りは異性の幼なじみってよそよそしくなるのに。」

「まあな。」

「でも、私はそれが嬉しかったんだよ。」

「俺も。」

「平助とはずーっとこうしていたいんだ。」

「うん。」

「だけどさ。」

隣にいる平助まであと3センチ。
少し手を伸ばせば互いの手は触れる距離。
こんな近いのに、それでも確実に自分のものだと言えない関係。

「いつか私や平助に大切な人が出来たら、やっぱり離れるのかな。一緒にはいられないのかな。」

答えは決まっている。
いられるわけないんだ。
平助にいつか彼女ができて、その時まで私がこのままでいたら良い気分はしないだろうから。

「お前馬鹿だなー。」

「は?」

平助には言われたくないよ…。私テストで負けたことないんだけど。

「そんなの簡単じゃん。俺らがお互いの大切な人になりゃいいんだろ?そうしたらずっと一緒じゃん。」

「…。」

あっさりと。
平助がそんなこと言うからすぐに受け止められなかったんだけど。

「…何か言えよ。」

「顔真っ赤だよ。」

「うるせ!」

それって告白だよね?と聞こうとしたんだけど、顔が赤いのは夕日のせいじゃないのがわかったから。

「ねえ平助。いつから…。」

「んなもん、物心ついた時から。」

「まじで?」

「…お前だってそうだろ。」

「自意識過剰ー!!!」

「違うから!お前が自分の気持ちに気付かないぐらい鈍いだけ!」

とりあえず家まであと十分、3センチの距離をゼロにしようと私は手を伸ばした。





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