君がいる世界 | ナノ



「はい、銀さん。」
「サンキュ。」

ホットココアを差し出すと嬉しそうに受け取って飲み始める銀さん。
本当に甘いもの好きなんだなと改めて思った。

「それでその後どうなったの?」
「ああ、そんでな、新八のやつが…。」

普段なら平日なんてあまり夜更かししないんだけど金曜の夜となれば別だ。
次の日が休みとなるとついつい寝るのがもったいなくなるのは社会人なら皆思うことではないだろうか。
しかも銀さんの話がおもしろくて全然眠くならないのだ。
マンガで彼らの話は知っているけれどそこにはのっていない細かな日常も銀さんが話すとおもしろおかしい出来事になるんだもん、ついつい聞いてしまう。

そんなこんなで二人ココアを飲みながら夜更かししているのだ。

「銀さん達毎日本当に楽しそうだね。」
「静かに過ごしたいけどな、俺は。」
「そんなこと言って新八君や神楽ちゃんいないと寂しいくせに。」
「そんなことないもんねぇー!銀さん大人だから一人で大丈夫だもんねぇ!!」

大丈夫とか言ってるけど絶対寂しがりな気がする。きっと一人でも器用にやるんだろうけどね。

「そういやお前家族は?」
「んー…いない。」
「は?」
「小さいときに両親は事故で死んじゃった。育ててくれたおばあちゃんも去年天国にいっちゃった。」
「そうか…。」

銀さんがくしゃりと私の頭を撫でた。慰めてくれてるのかな?

「でも親の記憶はほとんどないし、おばあちゃんが死んじゃった時は悲しかったけど…今は落ち着いたよ。まぁ友達もいるし仕事もあるしなんとかなってるから。それに…。」
「ん?」
「今銀さんもいるし。楽しいよ、毎日。」
「そうか。」

本当の気持ちなんだけど伝わってるかな?
私はそれなりに毎日楽しく生きてるんだけど…端からみれば可哀想なのかな?

「銀さんの話ききたいなー?」
「仕方ねえな。」

私が促すと銀さんは頭をポリポリとかきながらココアを飲んだ。そういえば銀さんはお酒飲めたんだっけ、今度は酒盛りしようかな。

「じゃあ次はな…。」

そして今日も思い切り笑う。
最近銀さんのおかげで毎日顔が痛くなるほど笑っている気がする。


「そろそろ寝るか?明日はどうする?」
「そうだねぇ…銀さんどこか行きたい?せっかくこっちにいるんだしふらふらする?」
「おー。頼むわ。俺いまいちわかんねぇから。」
「了解!」


銀さんをいろんなところに連れて行ってあげよう。
神楽ちゃんや新八くんにたくさんのお土産話をできるように。
後何日一緒にいるかはわからないけれど、私にできることをしてあげたいな。


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