君がいる世界 | ナノ



「銀ちゃん髪の毛結んでヨ。今日はそよちゃんに会いにいくネ」
「銀さーん部屋を片付けてください。ほらまたジャンプ置きっぱなしですよ」
「うるせー順番に話せよ銀さんは一人しかいないんですぅ〜」
「「さっさとしろ天パ」」
「お前らひどくね!?」

ソファに座ってお茶を飲む。新八君はさっきから掃除を始め神楽ちゃんは出かける準備に大忙しだ。もともと知ってはいたことだけど実際に目の当たりにすると改めてこの三人は血のつながりはないけれど家族なんだなぁと感じるのだ。
そこに私が入っていいのか、いや、入れるものなのか。

ここにいてもいいと言われ、正直に二人にもここにいたいことを伝えれば笑顔で迎え入れてくれたんだけど果たしてそれは本心なのだろうか。いや、二人は嘘をついてまで受け入れはしないだろうし疑う必要はない。でも…。

「銀ちゃんのアホ。もう凛にやってもらうからいいネ」

そう言うと神楽ちゃんは私のところへ小走りでやってきた。どうやら今日はいつものお団子じゃないものがいいらしく私は不器用ながらもハーフアップにしてあげた。服も今日はワンピースだ。美少女は何を着ても正義。

「神楽ちゃん可愛い!」
「凛ありがとネ!いってきまーーーーす!」

嵐のように去っていった神楽ちゃんを見送り心配でつい呟いてしまう。

「あんなに可愛くて連れ去られない?」
「ない」
「ないですね」
「君たち…」

私だって頭ではわかってるよ。でもどっからどうみても美少女なんだもん。心配になるじゃないか。

「さて、そろそろ買い物に行ってきます。銀さん、今日は依頼ないですけど間違ってもパチンコに行かないでくださいよ。うちはいつだって火の車なんですから。凛さん、よろしくお願いしますね」

そう言うと新八君はエコバッグを持って出て行った。彼をあんなにしっかり者にしてしまったのは一体だれ?ああ、隣にいるくるくるさんだぁ。

「誰がくるくるさんだァァァ!」
「あれ、声に出てた?」
「思いきりな!凛ちゃん最近ひどくない?あいつらに似てきてるでしょ!お前はもっと優しい子だったよ!!!」
「誰のせいでしょうねぇ。どちらが保護者かわからなくなりまして」
「保護者ねぇ」

銀さんは天井を見ながらそう呟くとゆっくりとこちらへ顔を向けた。そういえばいつの間にか隣に座っていたけど気づかなかったなぁ。

「この前も言ってたけどお前本当に思ってんの?」
「え?」
「保護者って」
「違うの?」

え、保護者じゃないの?保護してもらえないと私突然家なき子になるんだけど。そりゃそうなれば沖田君あたりが即行で回収しにきてくれそうだけど屯所は肩身が狭そうだ。だからといって一人暮らしできるほどお金もない。でもいつかは出て行かなきゃかなぁ。万事屋ってやっぱり三人で万事屋な感じがするしどうしてもそこに入っちゃいけない気がするんだよ。

「多分的外れな事考えてそうだから言うけどな」
「うん?」

いつになく真剣な顔した銀さんが一気に私との距離を詰めた。おでこにあたたかい感触を一瞬感じて手をやるとそこにはもう何もないんだけど至近距離の彼の目に自分が無表情で映っている。今…おでこにチュー…。

「こんなこと保護者はしねえぞ」
「そうですね」
「ちゃんとわかってるか?」
「そうですね」
「いいともかよ」
「そうですね」

いや待って。追いつけないんだって。何で?何が今起こって…。

「てっきり、家を出てほしいのかと」
「お前はまたぶっとんだこと考えるのな」
「万事屋ってやっぱり三人で万事屋じゃないですか。そこに入るのはなんていうかその…」
「もうお前も一員だよ、三人から四人の生活がもうしっくりきてんだろ。何逃げ出そうとしてんの。何豆パン生活から出ようとしてんの」
「銀さん、ここにいていいことはわかったんだけど私は一体どんなポジションでいればよいのだろうか」
「わかるだろーが」
「わからない!」

顔がワンテンポ遅れて熱を持つ。もちろんさっきの行動がわからないなんてそんなはずはないんだけど。だけどどうしても、自分の気持ちのせいで自分にいい方向に考えてしまうから。ここにいてもいいって言われただけで天にも昇る気持ちだったのにこれ以上を望んでいいものなのかって思うじゃない。本当にまだ夢の中で明日にでも覚めるんじゃないかって、そう思うじゃない。

「わからないよ…ちゃんと言ってよ…」
「何で泣いてんの」
「だって…そりゃ…」
「やーっぱりわかってんなぁ。この確信犯。…この前から泣いてばっかだな」

優しく、でもギュッと強く包まれてさらに涙が溢れた。これってあれですか。もしかしてもしかしなくても気持ちが…伝わって…その…。

「ちゃんといろよ。隣に」
「うん」
「お前銀さんのこと大好きだろうが」
「銀さんは?」
「……」

少しだけ体を離して上を見れば完全に視線を外してる銀さんがいて。ずるいなぁと思いつつ耳が赤くなってたから許すことにした。そうだよねぇ、銀さんが素直に愛を伝えるなんて想像もつかないや。

へらりと笑えば銀さんはやっとこっちを向いてくれた。そしてもう一度私を引き寄せて

「」

紡がれた言葉に私はまた泣いた。あまりに泣いたもんだから帰ってきた新八君が銀さんに竹刀振りかざしたぐらいだ。ちなみに腫れぼったくなった目はなかなか治らず夕方帰ってきた神楽ちゃんまで銀さんに殴りかかることになるのはまだこの時誰も知らない。

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