君がいる世界 | ナノ



「これでしばらくは大丈夫ですかィ?」
「ありがとう、沖田君」
「これぐらい俺がしてもらったことに比べたら大したことねえや」
「そうネ、お前が凛にしてもらったことに比べたら屁みたいなもんアル。早くパンケーキ奢れよ」
「そうだぞ沖田君、俺はチョコレートパフェでお願いします」
「ちょっと二人とも、その言いかたはないでしょう、ありがとうございます、沖田さん。僕は黒蜜わらびもちいただいていいでしょうか?」
「…凛さん、すこーし待ってて下せェ。俺は害虫三匹始末してきやすから」
「待って沖田君待って」

一通り買い揃え、荷物を一度万事屋へ置いた後にファミレスで昼食をとることにした私達。食事を終えたと思ったらデザートまでリクエストする三人に沖田君がバズーカをかまえるのを必死に止めたのであった。
服やら化粧品やら必要と思われるものを沖田君はすいすいと買い与えてくれた。こんな年下の子に買ってもらうなんて気が引けるなんてもんじゃないがこの世界では立派に働いている公務員様だ。ありがたく助けてもらうことにした。

「もう三人とも少しは遠慮してください。私も買ってもらってばかりで気が引けてるんですから」
「いや、そうは言ってもよ。お前が沖田君に助けてもらうのは当然だろ。お前も俺達を助けてくれたんだから。んでもってついでに俺達もおこぼれ貰ってもばち当たらねえだろ、どうせこいつ金なんてたいして使うこともなくため込んでるんだろうし」
「あなた十は下の男の子から奢ってもらって悲しくないんですか…」
「生きていくために手段なんて選んでられねえんだぜ凛ちゃん」

おかしいな、何で私この人好きになったんだろう。

「もう…ほら銀さん。とりあえずこれあげるから」
「これさっきお前が貰ってたやつだろ」

会計を済ませて外へ出た瞬間、桂さんからもらったお菓子を銀さんに手渡した。包みの中は小さなクッキーだ。試作品なのか三枚ほど入っている。

「じゃあありがたく〜」
「あ、銀ちゃんズルいネ!」

ぱくりと銀さんが一つ、すかさず神楽ちゃんがもう一つ食べた。新八君へ渡そうとしたけれどそれより前に銀さんが残った一つをつまみあげると私の口へ押し込んだ。

「お前が貰ったのにお前が食わねえのはおかしいだろ」
「もご…ちょっと銀さん!新八君にあげようと思ったのに」
「気にしないでください凛さん。お気持ちだけで」

ほろほろと口の中で崩れていくクッキーはかなり美味しいものだ。新しく洋菓子店でもできたのだろうか、どこの店だろうと包みを見ても特に店名等は書いていなかった。わかったら買いに行きたかったのに。

「こんなクッキー一枚じゃ満たされないアル。サド、甘いもん奢れよ、レディが二人もいるんだからそれぐらい当然アル」
「俺の目にはレディに分類されるのは凛さん一人でさァチャイナ」

神楽ちゃんと沖田君の戦いが目の前で繰り広げられる中、私は何か息苦しさを感じて胸を押さえた。思わず銀さんに縋ろうと隣を見れば彼もどこか苦しそうに息を吐いている。

「ぎ…銀さ…」
「凛、お前、大丈夫か?」
「…銀さん?凛さん?大丈夫ですか!?」

立っていられなくなってしゃがみこめばすぐ隣に銀さんも膝をつく。新八君の声に気づいた二人はすぐに戻ってきて私達に声をかけてくれたんだけど。

みんなの声もあっという間に遠くなり、私は重たい瞼を閉じた。



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