君がいる世界 | ナノ



目が覚めて枕元の携帯に手を伸ばす。
休日はのんびり寝ようと思っても平日と同じ時間に起きてしまうのは年を取った証拠なのだろうか。

そういえば昨日はやけにリアルな夢を見た。
銀さんがいきなり現れるなんてそんな夢物語あるわけが…あった。

視線をソファにやると目に入る銀色の頭。
まだ眠っているらしくこちらに背を向けて丸くなっていた。

「…あれ、現実だ。」

私はなるべく物音をたてないよう起き上がると洗面台に向かった。
顔を洗い軽く化粧をする。今日は休みだけどこれじゃ外に出ないわけにいかないだろう。銀さんの生活用品買わないと。
準備をするとキッチンに向かって朝食を作り始めた。
銀さん好き嫌いあるのかな?卵かけご飯食べているイメージしかない。

ご飯を炊きお味噌汁に卵焼きに青菜のお浸し、今日は銀さんもいるからあじの干物も焼く。
和食にしておけば間違いないでしょ。

「おはよーさん。」
「あ、おはようございます。銀さん。」

頭をガシガシかきながらキッチンに姿を現したのはやっぱり間違いなく銀さんで。
寝ぼけているのか死んだ魚のような目が一段と細くなっている。

「朝ごはん食べられます?顔洗って来てください。」
「おー。」

スタスタと洗面所に向かう銀さんは昨日のオロオロしていた人とは別人のように落ち着いていた。人間諦めが肝心なんだろうな。

テーブルに箸やおかずを並べていると顔を洗って目が覚めたのか銀さんが生き生きとした表情で立っていた。

「ひ…久しぶりにまともな飯!!!」
「…何食べてたんですか。」
「卵かけご飯だよ卵かけご飯。神楽が当番だと卵かけご飯しかでてこねえんだよ。」
「よくそれでもちますね。」
「もたせるしかねえんだよ…。」

いただきますというや否や銀さんはすごい勢いで食べ始めた。
そういえば家で誰かとご飯食べるなんて久しぶりだな。
そう考えるとちょっと嬉しいかも。

「味…大丈夫ですか?」
「え?うまいよ、すげえうまい。」
「そうですか。」

まあ勢いよく食べているのを見るとまずくはないんだろうけど。
すげえうまいなんて言われると照れるじゃないか。

それにしてもすごい光景だな。
だって銀さんとご飯食べてる。銀魂はずっと読んでいて別に誰が特別好きとかはなかったけれどやっぱり銀さんって主人公だしやる時はやるからかっこいいしこんな風に一緒に過ごせるとなると…意識してしまうよね。

「今日って休みなのか?」
「仕事?休みですよ。今日明日は休みなので銀さんの日用品買いに行かないと…服もないと困るでしょう?」
「すまねえな。できる限りの家事はするから。」
「その格好、目立ち過ぎるので私が先に服をいくつか買ってきますから留守番していてもらえます??」
「わかった。」

私は食事をすませると洗いものを銀さんにまかせて近くのショッピングモールに向かった。
シンプルな服をいくつか選び、ついでに生活用品も揃えた。足りないものは後で一緒に買いに行けばいいだろう。

あまり一人にしておくのはよくないかなと思い私は急いで家に戻った。
私が逆の立場だったら一人は心細いから。

「ただいま。」
「おかえりー。」

いらぬ心配だった。
銀さんはソファに寝転びテレビを見ている。ちょっとくつろぎすぎでしょ。順応能力高すぎるんですけど。

「服と…日用品と…足りないものは言ってください。散歩ついでに一緒に行きましょ。」
「何から何まで本当ありがとな。お前俺の周りにはいないタイプの人間だわ。」
「?」
「良い奴ってことだよ。」

そう言うと銀さんは私の頭をわしゃわしゃと撫でる。
銀さん私のこといくつだと思ってるんだろう。多分そんなに年は変わらないんだけどな。

「早速外出てみます??」
「いいのか?じゃあ着替えるわ。」

着物姿じゃない銀さんは新鮮だった。そして似合っていた。
髪が目立つからとニット帽も買っていたんだけどそれを被るともう一般人…あ、銀さんもともと一般人か。とにかくこれなら目立たない。

「近所のスーパーとかドラッグストアぐらいは知ってた方がいいですよねー。」
「あのさ、凛。」
「はい?」
「敬語やめない?俺世話になってる身だし普通に喋ってくれてかまわねえんだけど。」
「…わかった。じゃあ張り切って道覚えてね。」
「おー。」

私達は夕食の材料を買ったり、足りなかった物を買いつつ近所をふらふらと散歩した。
これで平日私がいなくても銀さんが暇をすることはないだろう。

「今日の夕飯何?」
「んー寒いしお鍋しようよ。」
「いいねぇ。」

こんな会話、まるで恋人みたいじゃないか。
ずっと一人だったし何だか心がほわほわする。
私長い長い夢を見ているわけじゃないんだよね?

いつか帰っちゃうんだろうけどせっかくだからこっちの世界を満喫してほしいななんて。
満喫してるのは自分じゃないかと思いつつ私は銀さんと並んで歩いた。

prev / next

[ 戻る ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -