「えー…あけましておめでとうございます。」
「あけましておめでとうございます。」
こたつに入りながらカウントダウンをしたのは数分前。
私達はクリスマスどころか新年も共に過ごしているのであります。
「なんか新年ってさ、みんなそわそわしながら迎えるわりにあっけないよね。テレビとか見てるといつの間にか過ぎてることもあるよね。」
「大人になっちまった証拠だな。ガキはハイテンションでカウントダウンしてハイテンションで神社に走るんだよ。」
そんな私達は大人なのでみかんを食べながら転がっているわけですが。
「凛。作戦会議すっぞ。」
「作戦会議?」
銀さんが起き上がり変な事を言うもんだから私もつられて体を起こす。
「まず、銀さんがここにきてからもう一ヶ月以上がたちました。」
「そうですねー。」
真剣な表情で言うから何事かと思ったよ。
あっという間の一ヶ月だったね、本当に。
「帰るどころか俺達帰る為の努力を全くしていませーん。」
「そうですねー…ってかどうしようもなくない?源外さんが迎えにくるの待つしかなくない?」
「それにしても遅えだろ。そもそもすぐに来れるはずだろ?あの機械が原因なの明白なんだから。」
「…壊れたとか?」
「不吉なこと言うんじゃねェェェェ!俺も思ってたけど!薄々感じてたけどォォォ!」
顔面蒼白で銀さんが頭を抱えていた。
間違いなくそれだと思うんだけどな。まぁだとしたら…。
「そろそろ機械がなおってお迎えくるんじゃない??」
「まあだとしたらここを動かないほうがいいんだろうけどよ…でもな、凛。」
「ん?」
「仮に…俺が帰れなかったらどうする?」
「え?」
銀さんが帰れなかったら…?
「いや、俺も帰りたいよ?全力で帰る努力はしたいけど…さ。でもあいつらが迎えに来てくれなきゃ俺ずっとここだろ?さすがにいつまでもお前に世話になってらんねえし、俺も色々考えなきゃいけないわけ。」
「…でも銀さん身分証明もできないし、仕事も家も見つからなくない?」
「長谷川さんみたいになるしか…。」
「いやいやいや、諦めちゃだめだから。」
正直私はこの生活に不満はないしこのままでもいいんだけど、銀さんはそう思わないだろうな。
「年頃の女の子の家にいつまでも転がり込んでるわけにいかねーだろ。」
「まあ…そうですかねぇ。」
「何だよ、お前俺がいつまでもいてかまわねえの?」
「うーん。まあ。別に支障ない。」
「支障ないのも問題だな。」
「うるさいですよ、天パ。」
「天パ今関係なくねぇぇぇ!?」
涙目で声を荒げる銀さんをスルーしてミカンを食べる。
なるほど、確かにいつまでも銀さんがいても困らないって私枯れてるね。
彼氏作る気もないってことだ。
「でも私達にできることってないじゃん。祈るぐらいじゃん。」
「精一杯祈ってくれる!?なんか俺が帰るとかそういうこと忘れてない?」
「…忘れてないよ。」
「今間があっただろうが。」
だって生活に支障がないから何が何でも早く帰ってー!!!とか思えないんだもん。
実際楽しいし。
「わかりました。祈りますよ祈ります。お願いします神様、仏様、源外様。銀さんを迎えに来て下さい…。」
「お願いします、神様、仏様、源外のじじい、今年こそ宝くじ当たりますように、パチンコ勝ちますように、依頼来ますよ…ぐふっ!!」
「全然関係ないじゃん!!!真面目にやってよ!」
「…いいパンチだった…新八思い出した。」
お腹を押さえながら再びごろりと倒れる銀さんに思わずため息がでた。
帰れないのって本人のせいじゃない?この人こそ帰る気ないんじゃない?
「早く帰らないとよ〜…。」
「ん?」
体をこちらにむけた銀さんは視線は外して言葉を続ける。
「情が…わかね?お互いに。」
「まあ、そりゃそれなりに。」
とはいえ、別に恋愛感情があるわけでもないし。
飼ってたペットがいなくなった…って感覚かな。
「おい、言葉にでてんぞ、誰がペットだ。」
不満そうな銀さんの口にミカンを放り込むともぐもぐしながらまだ何か呟いていた。
でも確かに。
少し、考えないといけないかもしれない。
これ以上何かが生まれる前に。
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