君がいる世界 | ナノ



「嘘だろおい…。」
「いや、こちらの台詞なんですけど。」

泣きそうな声で私の名前を呼ぶので近所迷惑になるまえにドアを開けると銀さんが転がり込んできた。ちょっと可哀想だったので部屋に入れて今向かい合ってます。
一応私が考えられる仮説を言うと銀さんは頭を抱えて机に突っ伏した。

つまり銀さんは源外さんの装置のせいで次元の壁を越えてしまったということ。
私達がいる世界では銀さん達は本の中の人だと言うと信じられないといった顔をしたが空に宇宙船がなかったこと、私の携帯で万事屋の番号にかけても繋がらないこと、テレビや新聞の内容から銀さんは別世界に来てしまったということを理解したらしい。


イチゴ牛乳はさすがに常備していないからココアを淹れると泣きそうな顔が笑顔になる。やっぱり本物なのかな?これ本当に現実??

「でもその装置でここに来たということはその装置で迎えに来てくれるかもしれませんよ?それが原因ってわかるでしょうし。」
「そうかもしれないけどよぉ…いつ来るかわかんねえし、だいたい迎えにくる保障なんてないだろ。」

ああ、完全に絶望の表情をしているよ。
まあ無理もないよね。私が逆の立場だったらそうなるもん。
戸籍もないし自分を証明できる物が一切ないんだ。仕事も家も見つからないし病院も行けないし、お金稼げないと食べることもできないもんね。

どうしよう…かな。
これ、助けたほうがいいのかな。でも信じていいのかな、こんな非現実的なこと。
あ、夢なら寝て起きたら銀さん消えてるか。

「…お迎えがくるまでここにいますか?」

その一言に屍と化していた銀さんに生気が戻る。

「え?」
「だって銀さん行く場所ないでしょ?お金もないだろうし…。私一人暮らしだから部屋は狭いけどまあ暮らせなくはないですし。」
「お前…本気で言ってる?いきなり見ず知らずの人間、しかも異性を部屋に転がりこませようとしてんだぞ?」
「見ず知らず…と言ってもマンガで知ってるし…。じゃあどうするんです?ここを出てずーっと野宿生活してお迎え待つんですか?天から先にお迎え来ますよ。今冬ですよ。」
「ぐっ…。」

言葉に詰まる銀さん。でも本当良い人なんだな。ちゃんとこっちの心配してるんだから。

「家事、手伝ってくださいね。」
「は?」
「私平日は仕事なんで。銀さんここじゃ働けないし家にいてもらうこと多そうだから。」
「…わかったよ。申し訳ねえけど頼むわ。」

頭を下げる銀さんに私は笑顔ではいと答えた。

さあ、目が覚めたらどうなっていることやら。


prev / next

[ 戻る ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -