振り向いてくれなくていい | ナノ


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俺があいつの気持ちに応えた次の日。(正確には俺の気持ちは届いていないが)
廊下でばったり会った総悟は俺を見るなりニヤリと口角をあげてこう言った。

「進展があったようで?」
「何のことだ。」
「腹くくるらしいですねぇ…。」
「…あのバカ。」
「とりあえず俺の給料アップと旦那にパフェ十回ぐらい奢ってやってくだせェ。」
「はぁ??」
「あんたらくっつけたんだ。それぐらい当然でさァ。」
「んなの頼んでねえ!」

何が俺達をくっつけただ。あいつの努力以外の何物でもねえだろうが。
よりにもよって何でてめえとあのヤローに礼をしなきゃいけねえんだよ。

「それとちゃんと好きだって言ったんですかィ?あいつから報告されてないんですけど…。」
「んなこといちいち報告させるか!」

本当にこいつはとことん勘の鋭い奴だ。苛々させる笑みを浮かべて話を続ける。

「あんた、言ってないですね。道理であいつがこれからもがんばります!副長に惚れてもらいますだのわけわかんねえことばっかり言ってると思いやした。…あーあー報われねえや。あいつは毎日あんなに伝えてたのになぁー。」
「簡単に言うことじゃねぇだろ…。」

いや、言うべきなのはわかってるけど。
あんなにも俺の気持ちに欠片も気付いてねえとなると逆に言えねえよ。恥ずかしいことこの上ねえんだよ。

「へえ。これじゃまだ俺も付け入れる隙がありやすね。」
「…は?今なんて?」

あれ、こいつ今とんでもないこと言わなかった?
付け入る?

「おーい、楓。団子食いいこうぜー。」

さっと手をあげると総悟は俺の後ろへ声をかける。
丁度廊下を楓が歩いてきたところだった。またお妙のところへ行こうとしているのか着物姿だ。

「え?いいですけど?非番ですし…。沖田隊長も今日非番でしたか。」
「見てぇ映画もあるんでねィ。付き合え。夕飯いいとこ連れてってやりまさァ。」
「え!?本当に!?わーい!準備してきます!」
「おい!!」

いうやいなや楓は踵を返して自室に戻って行った。
間違いない、団子と夕飯に釣られている。

「邪魔するなよ土方ァー。まだ誰ひとり、恋なんて実っちゃいませんからねィ。」

悪魔の笑みを浮かべて総悟は俺を押しのけ楓の後をついていった。
急いで追おうとする俺を仕事を持ってきた山崎が行かれちゃ困ると泣きついた。近藤さんが帰ってこないらしい…理由も居場所もわかるだろうが!殺すぞ!

どうやら今度は俺があいつの言動に一喜一憂しなきゃいけねえらしい。
よく考えてみりゃあいつの周りにいる潰さなきゃいけねえ虫は他にもまだいたな。

俺はとりあえず山崎に近藤さんを迎えに行くように告げあいつの持っていた書類を受け取ると自室に向かい歩き始めた。

「…悪い虫、消すことから始めてやろうじゃねえか。」

煙草に火をつけ、煙をゆっくりと青い空へくゆらせた。




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