振り向いてくれなくていい | ナノ


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「わぁ!綺麗…。」
「トンボ玉だね。」

そよちゃんが足を止めたのはきらきらと輝くトンボ玉が並んだ屋台だった。帯留め、簪、ストラップ…色々なものが置かれている。お姫様だからいくらでも持っていそうなものなのにやはりこういうところの雰囲気に飲まれるのか目を輝かせて見ていた。

「何か買う?」
「はい!神楽ちゃんとお揃いの髪飾りを…!楓ちゃんも買いましょう?」
「あ…私は髪飾りはつけないからなぁ〜。神楽ちゃんに買ってあげて?」
「そうですか…。でもそうですね、お仕事中につけられませんもんね。」

残念そうに目を伏せてそよちゃんは言うと二つ髪飾りを選んで買っていた。
包んでもらっている間に商品を眺める。確かにどれも綺麗でほしいなと思ってしまうけれど…普段使えないしもったいないよね。


「楓、買わなくていいんですかィ?」
「だって沖田隊長。こんな簪つけて戦えないでしょう?」
「いや、相手が油断するかもしれねェ…男が簪つけてたら大抵ビビるだろィ?」
「ちょっと!誰が男ですか!どう見ても女の子!お!ん!な!の!こ!」

くっそ…あんたに簪買ってやろうか。似合うなコノヤロー!!

「じゃあそよちゃん、次は何がいいかな?」
「屋台の料理をいただきたいです!」
「まずはお好み焼きからいきやすぜィ。あとはたこ焼きにかき氷に綿あめ、チョコバナナ。その辺押さえときゃ祭りにきたって感じがしやす。」
「わー!!そんなに食べられるかしら!?楽しみ!!!」

そういえば副長は?と思って後ろを見ると彼は少し離れたところでタバコを吸っていた。どうしてああも似合うんでしょうね。そこらへんの女の子みんな目が釘づけなんですけど。移動しますよと大きな声で告げると彼の口は先に行ってろと動いた。吸い終わってから合流するつもりなのだろう。たいして広くもない会場だからすぐに追いつけると思い私たちは先に進んだ。


「よーし、楓。俺ァここで姫様とお好み焼き食ってるからかき氷買って来い。」
「はぁぁぁぁぁ!?」


お好み焼きと飲み物を確保して賑わっている場所から少し外れた石段に座るやいなや沖田隊長は私にこう告げた。そよちゃんも目を丸くしている。

「だってみんなでゾロゾロ行く必要もねえだろ。姫様の護衛で残るのはお前より俺のほうがいいだろうが。」
「それは…そうですけど。」
「いちご、メロン、ブルーハワイな。あまりにも遅いとチョコバナナも追加させるぞ。お前の奢りで。」
「いってきまーーーーーーーす!」


知っている。社会はいつだって理不尽だ。組織って…理不尽だ。


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