クラスは違えどあの有名人と付き合うことになってから。


「すごいね、ギャラリー。見に来てるー。」

「…怖い…怖いよ…。」


二週間ほどたったというのに未だ私のクラスにあらゆる学年の女の子たちが訪れていた。理由はもちろん、あの沖田総司の彼女はどんな奴だと確認するためだ。
どんだけ女の子たちが言いよっても誰一人彼女というポジションに昇格できなかった(遊びの関係は別として)のにいきなりふらりと現れた何の変哲もない女子があの沖田総司を射止めたとなれば気になるのだろうね…ね。


「それにしてもさ。私も未だに信じられないもんね。あんたと王子のツーショット。」

「ああ…そう。」

ずずずっといちごみるくを飲んでいる親友はそんな彼女たちを見つめながら呟いた。
彼女がいるおかげで私はフルボッコにされることを免れていると言っても過言ではない。
美人の類に入るであろう彼女はその涼しげな瞳とすらりとした身長(168cm)でだいたいの人を威圧する力を持っているからだ。…いや、実際空手やってるから強いんだけど。

「しかもあの斎藤君や藤堂君まで一緒のこと多いもんね。何その逆ハーレム。どうなってんの。」

「ははは…わたくしにもなにがなんやら…。」

「でも良かったね。本当にあの沖田総司と付き合うことになるなんてさ。」

「捨てられないよう努力しま…。」


下を向いてそう言うと廊下から黄色い悲鳴が聞こえた。
ああ、やっと来てくれたんだと思って廊下を見る。


「みつちゃん。」

「あ、総司。」


ひらひらと手をふって教室のドアのところにもたれかかる総司様に目をハートマークにしている女子が多数。
あなたたち目を覚まして。それ違うから。それドMだから。


「いってくるね。」

「はいはーい。」


親友に一言残し私はお弁当を掴んで総司のもとへ歩いた。
走ってはいけない。
決してご主人様に近づく犬のようにしてはいけない。


付き合いだしてから最初の昼食。
一緒に食べようかなんて言われて浮かれた私は二人分のお弁当を持って総司の所へスキップしていったんだけど。


「何それ。何うきうき尽くしてくれちゃってんの。Mは尽くされるより尽くしたいんだけど。弁当の一つも用意しろよ気が利かねえなの一言はないわけ?」


そんな上級者にいきなりなれるかー!!!!!
とりあえず頑張って黙って食えよと言ったら嬉しそうに食べ始めた。なんなの。


それからは一応私がお弁当作ってるけど迎えに来るのは総司だ。
もう難しいんですけど。
ねえ、恋愛ってこんなに難しいの?レベル高すぎない?いろんな意味で。


「今日は天気いいし、屋上で食べようって平助が。」

「わかった。もう二人は先に行ってるの?」

「うん。」


助かった。
二人きりだとまだ色々と慣れないんだよ。
彼の好みの女になる!とかいう女子いるけど本当にすごいよ、尊敬する。
彼に合わせてドS街道走ってたら嫌な人間にならないか不安で仕方ないんです。




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