休み時間に耳に入ってきたのは近くの席の女の子達の会話だった。今話題の少女マンガ片手に楽しそうに話している。

「壁ドンからの顎クイでしょ!?」
「やばいー!!」

壁ドンって…隣の部屋にうるせぇって壁を殴って訴えるあれではなく…男の子が女の子に迫るあれですよねぇ。顎クイは顎つかんで上を向かせるんだっけ??

「ただし、イケメンにかぎるってやつね。」
「そうだろうね。」


同じく会話を聞いていた親友がぽつりと呟きすぐに相槌をうった。彼女達も添う思っているのだろう、会話の続きからしてわかる。

「私土方先生にやってほしい!!」
「絶対やってくれないわ〜。あ!原田先生やばくない!?壁ドンされただけで気絶するぅ!」
「絶対やらなそうな人がやるから破壊力があるんじゃーん。」
「まーでも似合うのはさ…沖田君だよね!戸城さんはやってもらってるのかなー。羨ましい!」


とんでもない会話に飲んでいたカフェオレを吹き出しかけた。なんででてきた沖田総司。いや、それが奴のイメージなのか…。


「似合いそう…とのことですけど真実は?」


どうでもいいって顔で聞いてきたよ。正直興味ないくせに何故聞いてきたんだよ親友。


「されたことないです。」
「へぇ。意外だなぁ。」
「棒読みなんとかしてよ。」
「興味ないよね、壁ドンとか顎クイとか。丼もの食い放題のほうが興味あるわ。」
「ドンとクイしか合ってないから!」


壁ドンに顎クイなんてそりゃ私も興味ないよ。あれはマンガやドラマの世界だから成り立つものであって…まぁそりゃイケメンなら許されるのかも…だけど…。


『僕だけ見てなよ。』


そう言って総司に壁ドン顎クイされるのを瞬時に想像してしまってドキドキしてしまう。
なんって単純なんだ私!
なんって馬鹿なんだ私!


相手はドMなんだぞ!!!


『壁ドン?いいよ、さぁやってみてみつちゃん。』


って言われるのが落ちでしょうが…そうでしょうが。

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