皆さまこんにちは。みつです。
さて、総司とお付き合いを開始して早三ヶ月。ええ、三ヶ月も経ちました。自分でも驚きです。だって私なんてさっさと捨てられると思っていたんですもの。彼曰く自分から捨てるつもりなどないとのことですがそれにしてもねぇ。

「おーい、みつ。」
「あれ、平助君。」

放課後、総司が教室に来るのを待っていた私に廊下から平助君が声をかけてきた。とりあえず彼の所へ移動する。

「いや、特に用ってわけじゃないんだけどさ。総司とはうまくいってんのなー。」
「うん、今自分でも振り返ってて驚いてる。」
「自分でも驚くのかよ。」
「だってさー。」

総司がMなんて誰も思っていないし、あまり広まるのも私としては嬉しくない(彼はバレても問題ないそうだ、くそうMめ。)ので平助君と教室から少し離れた廊下で話していた。

「まぁ俺も一君も正直嬉しいよ。だってあの総司が一人に落ち着いたんだからさ。しかも両想いなら俺達も安心だし。」
「うん、なんか両想いという部分に何か引っかかりがあるんだけど友達に喜んでもらえるのは嬉しいね。」
「でもさ、あいつ相変わらずなの?少しはM部分が緩和されたりとか…。」
「…緩和…。」
「ごめん、聞いてごめん、ほんとごめん。」

遠い目をしていた私に平助君も目を伏せながら謝ってきた。彼は私より総司と長い付き合いなのだ、そう簡単に性格なんて変わるもんじゃないとわかっているのだろう。

「で、でもさ。やっぱり少しは変わるんじゃねえの?一緒にいたらすこーーーしずつ何か変わってるかもしれないぜ?本人たちも気づかないぐらい少し。」
「平助君、本人たちが気づかなかったらもうそれはアウトでは?」
「うう。あ、総司だ。」
「え?」

平助君の声に自分の教室の方を見ると総司が私の教室に入っていくところが見えた。どうやらこちらに気が付かなかったらしい。いつも総司は私を迎えに来るからクラスメイトも特に騒ぐこともないだろう。

「あ、行かないと。」
「…みつ、ちょっと待った!!」
「はい??」

教室へ戻ろうとする私を平助君は何故か引き留めた。

「ちょっとさ、総司のこと観察しようぜ。」
「え?」

そう言うと彼は教室のドアに身を隠すようにして中を覗き込んでいた。私も同じようにして中を見ると総司は窓際の空いている席に座りぼんやりと外を見ている。まだクラスメイトが数人残っていたが誰も声をかける様子はない。というより女子は総司のことを目をハートにして見ているし男子は特に興味もないだろう。私と平助君の様子に気が付いた子は怪訝な顔でこちらを見ていたけれどとりあえずスルーの方向で。

「このままずっとみつが来なかったら連絡してくるんかな?」
「うーん。いつも約束時間通りに来るな、待たせろとか言うから本望なんじゃないかな。」
「…安定のMだった。」
「時間の無駄じゃない?」
「いやいや!きっとお前と付き合いだしてあいつもそれなりに変わってるはずだよ。世間の常識に近づいていることを俺は期待する!!」
「うーーん。じゃあ三十分だよ?長くても。」
「おう!」





三十分後。彼は時々伸びをしたり欠伸をしたりしていたがこちらに連絡がくることもなく、かといって帰ることもなくそこにいた。私と平助君は途中から携帯ゲームで対戦始めたからね、あまりの暇さに。


「…みつ。そろそろ行くか?」
「うん。もう帰りたい。」

切りのいいところで私たちはゲームをやめると教室へ入った。総司以外誰もいない教室に足音が聞こえれば自然と彼の視線はこちらへと向く。

「あれ?みつちゃん、平助君といたの?堂々と浮気?」
「違うから。」
「総司さー。普通待たされたら何してんの?って連絡いれね?」
「二人とも僕がどれだけ待つか観察してたの?」
「…まぁ。」

さすがにわざと待たせておいたなんて言ったら総司も気分を悪くするかなと思い私は謝罪の言葉を出そうとした…その時。

「放置プレイってやつ?」

想像の斜め上のお言葉に謝罪のしゃの字も吹っ飛びました。ありがとうございます。

「待たされるのは悪くないけどたかだか三十分じゃない。どうせなら二時間以上、いや、むしろ何も言わずに先に帰るぐらいしてくれないと放置プレイにならないでしょ?やる気あるの?二人とも。」
「「ご…ごめんなさい。」」

違う。私達が謝罪したかったのはそれじゃない。平助君と私は確実に同じことを考えたはずだけど総司の謎の気迫にとりあえず押された。そして謝罪したことをまた怒られた。

その後しばらく放置プレイとはとかMへの扱い方を語られ、平助君が白目になった頃。私がごちゃごちゃうるさい!と彼の頭をぺちんと叩いて(本気で叩けません、そして本気じゃないことにまた怒られます)話を終了させた。


付き合って三ヶ月。
三ヶ月ということは約九十日。
その日数を費やしても、彼との付き合い方と未来がまだよく見えない私は少し不機嫌な総司と疲れ切った平助君と並んで帰ることとなった。


つづく

prev / next

×