「お…おはよ。」
「…。」
とりあえずぎこちなさ全開で挨拶を返す。
朝だというのに気だるそうなのは相変わらずだ。
うん、かっこいい。
だけど落ち着いて私。
さっきの藤堂君の話が事実だとすると…。
ここでかっこいいとか言ったら終わりだよね、多分。
「どうしたの?怯えたような目してさ。何かあった?」
「何も。何もないけど?それより五分遅刻。遅い。」
文にしたら素っ気ないことこの上ないだろうけど私の声は震えています、はい。
こんな偉そうにしていいの?大丈夫?あの人気者沖田君に遅いとか…私どんだけ調子のってんだよとか言われない?
「…へえ。実は本当にS?違うと思っていたんだけど…。」
「え!?」
「やっぱり。昨日の告白は勢いで噛んだってとこ?」
「あ…。あの…。」
無理ですって。
本物のドS女王様のところへ修行にでもいかないと無理ですって。
私の偽物Sっ子をさっさと見抜いた(さすがドM)沖田君は絶対Sだろってぐらいの冷たい眼差しでこっちを見ていた。
「でもまあ…昨日の告白は斬新というか、だいぶ響いたものがあったよ。」
「あははは…ですよね。」
「うん、だからもしかしたら素質あるかもね、君。」
「な…なんの?」
「Sになる素質。」
そう言うと沖田君は私の手をとり立ちあがらせて歩き出す。
「沖田君?」
「総司。」
「え?あのー…。」
「遅刻するけど。別に僕はかまわないけど君はそういうタイプじゃなさそうだから。」
「総司…君?あのー私のこと振るんじゃないの?」
「何、振ってほしいの?」
「嫌だけど…ドSだと思ってたんでしょ?」
「まあ今は違うけどこれからそうなればいいんじゃない?」
「ええ!?」
「だいたいさ、一度付き合うって言ってるのに何で僕から振らなきゃいけないのさ。M的になんのメリットもないじゃない。」
まあ確かに…ドMなら振り回されたい願望があるのかな?
え?ってことは私が振られることってないの?
「まあ精々がんばってよ。僕好みになるようにさ。」
そう言って笑った彼の笑顔は例えるなら悪魔の笑顔。
こんな爽やかに邪悪な顔できる人がドMって未だ信じられないんだけど。
「が…がんばろっかなー…。」
むしろこっちから断る勇気もなく。
こうして私達の変な関係がスタートしたのだった。
つづく
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