しかもただのMじゃない。ドSな口調でドMなことを言うんだ。
前にも今日みたいなことがあって手をふったら

「何笑ってんの?僕がそんなこと望んでないこと知ってるよね?馬鹿なの?」

って冷たくあしらわれた。
がしっと片手で両頬を掴むように持たれ、至近距離で見つめられる。
悔しいけどかっこよかったです!!


「蔑んだ目で見てって言ったじゃない。ゾクゾクするからさ。」


どんなドM!?口調ドSなのに言ってることおかしい!!


「今度から気をつけてよね。」


そう言って去って行った総司の背中、今でも忘れない。


そもそも始まりからしておかしかったんだ。
一目惚れした私はしばらくしてから勇気を出して告白したんだけど…。




「あの、沖田君!」


今思うとどんな勇気だよって状況だった。
部活帰りの彼を見つけて声をかけたのだ。
だけどその時、周りには斎藤君や藤堂君といった彼の友達もいて…。
でもこんな状況慣れているのか、彼らは空気を読んで少し先を歩いてくれた。


「何?ってか君、誰?」

「あ…A組の戸城みつと申します。あのですね…。」

「何か用があるなら早く言ってよ。一君達待ってるからさ。」


少し苛立っているのがこっちにも伝わってきた。
彼は感情をストレートに表現する…聞いてはいたけれどここまでとは。
告白なんてしたことがなかった私はその態度に驚いてしまい、つい…つい…。


「あの…私と…。」


――付き合ってください


その一言を噛んだ。
いや、噛んだってくくりにしていいのか謎。
だって私は…。



「私と…つ…付き合え!!!」



まさかの命令口調を彼にぶちかましてしまったのだから。



その言葉が口から飛び出した瞬間。
自分の耳を疑った。
そして、同時に終わったことを確認した。
目の前の沖田君は目をまんまるにしてるし、いくら先を歩いていたとはいえ、私の大きな告白が届いたのだろう、斎藤君と藤堂君も思わず振り返っていた。



終わった、私の告白。いや、人生。
ただふられるだけならまだしも、これはずっと彼の記憶に残るはずだ。
この後だってきっと三人の話のネタにされるのだろう。
あの沖田総司に付き合えと命令した女。戸城みつ。
穴があったら入りたい。いや、埋めてください。お願いします。



「…みつちゃん。」

「はい!?」



声をかけられ、思わず下を向いていた顔を上に上げた。
だって今、名前…。


「いいよ。付き合ってあげる。」

「へ?」

「何驚いてるの。付き合えって言ったの君じゃない。」

「いや、それはそうですが…。」


何これ、どういうこと?
沖田君の気まぐれ?


「携帯かして。番号交換しよ。」

「は…はあ。」


私の携帯をとりあげるとさっさと番号を交換してくれた彼は


「ま、後でまた連絡するよ。じゃあね、みつちゃん。」


そう言って去っていったのだ。
今思えば気付くべきだった。
あの時の斎藤君と藤堂君の表情に。
二人の驚きと哀れみの混ざった表情に…!!


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