「違うでしょ!普通は俺の女に手を出すなでしょうが!!!!」

「え?」

「…。」

ぽかーんとした表情の総司。後ろにいる風間さんは見えないけどきっと同じような顔をしているんだろう。

「何で天秤にかけられようとするかな!?そこは自分のもんだと言いきりなさいよ、仮にも彼女が迫られているのに穏やかな表情でいるかな!焦って私を引きとめるぐらいしてよね!!!!!!」


言いきってから思いました。
総司が焦って引き留める絵なんて想像もつかないと。
僕の彼女に手を出すななんて言いそうにもないと。

思わず強く言っちゃったけど…でも私、総司の彼女なんだよね。
やっぱり総司は気まぐれで付き合いだしたけど…私のことなんて好きじゃないのかな。

私はそりゃ総司がこんなんだって知って驚いたけどさ、それでもやっぱり好きなのに。


「みつちゃん!?」


ぽろっと一粒落ちたら次々と涙が落ちてきて。
ああ、泣いたりしたら嫌われるのかなって一瞬よぎったけどもう我慢もしなかった。
これを受け入れてもらえないならこの先彼とやっていけないから。


「貴様…我が嫁に何をしている!?」

「ちょっとあんたは黙っててくれないかな?…渡すつもりなんてないんだからさ。空気よんでくれる?」


総司の声色がいつもよりうんと低くて思わず顔を上げると見たこともないぐらい怖い顔をしていた。…怒ってるんだ。

少しの間があって歩きだす音がした。風間さんが私達を残して先に戻って行ったようだ。


「みつちゃん。」

「…はい。なんでしょうか。」

「なんでそこは敬語になっちゃうの。」

「いや…さっきは勢いで…その…。」


私の目元に総司の温かい指が触れた。
涙を拭われてるんだと気付くと少し顔に熱が集まる。

「すぐ泣く子は嫌いなんだけどさ…。」

「う。」

「さっきの勢いのある感じは嫌いじゃない。…焦って引き止めろって言われたのも悪くない。」

「総司?」

「少し怒った泣き顔はいいかもしんないって言ってるの。」


すぐにふわりと降りてきた温かい感触を唇に感じたと同時に目の前に綺麗な顔。
それがキスとわかった瞬間、体がかちっと固まった。


「…あれ?みつちゃん?」

「…。」

「なにキスぐらいで固まってんの。え?初めてだった?」

「っ…ぎゃああああああ!」

「…それ普通に傷つくんだけど。」


嫌われるかもしれないとか、少しでも好きって思ってくれているのかとか。
悩んだかと思えばこの展開。

ジェットコースターみたいでついていけなかった私があげた声はとても乙女とは思えない叫び声で…さすがのМ総司も傷ついたご様子で。

どうやら神様は
私達の恋をまだ終わらせるつもりはないようでございます。


つづく


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