「ねぇ、風間に絡まれたんだけど。君のせいでしょ、どんくさいなぁ。面倒ごとに巻き込まないでよ。別れよう。」
とか言われたらどうしよう!!!
別れようまではいかなくても確実に舌打ちぐらいはされるよ!されるよ!!
なんとか阻止しなくちゃ!
そう思った瞬間、昼休みが終わるチャイムが鳴り響いた。流石に授業中にあの人もこないだろうと思い私は急いで教室に戻った。
そして忘れてしまったのだ。土方先生の抜き打ちテストのせいで風間さんのことなんて(失礼)頭からすっぽり抜けてしまったのだった…。
放課後、いつも通り教室で総司を待っていると廊下が騒がしいことに気づいた。
「ん?」
「なんかうるさいね。」
親友といっしょに廊下側の窓から覗きこむとそこには…。
「貴様、我が嫁に手を出すな。」
「何の話?いきなりすぎてわけわかんないんだけど。人違いじゃないの?」
「間違えるはずもない。沖田総司。我が嫁に手を出したこと後悔するがいい。」
なんか喧嘩始まってたー!!!
よりにもよってあの二人ということもあり女の子達が遠巻きに見ているし、喧嘩だって男子達も何人か眺めている。
ん…?
二人を囲う生徒達の中に見覚えのある二人がいた。
斎藤君に平助君!
君たち見てないで止めなさいよ!!
私の視線に気づいた二人が顔を出すな、教室で待ってろと言わんばかりに手をふっていた。
いや、わかるけど…でもこれ…一応私のせいなんじゃ…。何これ、夢なの?
二人のジェスチャーも虚しく、総司が私に気づくと風間さんの横を通りすぎてこっちに向かってきた。
「待たせてごめん。帰ろうか?」
「え、あの、総司…。」
「貴様…。俺を無視するとはいい度胸ではないか。」
「何、まだいたの?」
「なんだと!!」
ああ、目の前で始まった。終わった。逃げられない。
「何、あんたモテ期なの?」
「そう見えるならそうなんでしょうか。」
「白目むくなよ、すごいじゃん、イケメンに取りあいされるなんて。」
隣で暢気にジュースを飲みながら観戦している親友、感情こもってないからね、まったくすごいって思ってないのわかってるからね。
「つまり、みつちゃんのことが好きなわけ?」
「当たり前だ。俺の妻に手をだすな。」
「…おかしいな、日本語のはずなのに理解ができないんだけど。」
あ、総司も思ったんだ。眉間に皺をよせて腕を組んでる姿もかっこいいよう!
総司はそのまま視線を私に移した。
「…みつちゃんはどう思ってるのこの状況。」
どう思ってるって…。
「できればこのまま窓を閉じて何も見なかったことに…。」
「どう思ってるのかな?」
「ひっ!」
窓を閉じたいという気持ちが抑えきれず自然と動いていた右手を廊下側から総司が掴みにこりと微笑んで同じ質問を繰り返した。思わず小さく声をあげてしまう。
だって目が笑ってないから!!!
「私は総司の彼女だから風間さんとは付き合えないと何度も伝えているはずなんだけどな。」
「ふーん。」
「と、とりあえずここ離れよう!目立ってるから!!!」
私は荷物をつかむと急いで廊下に出て総司と風間さんの腕を掴み、走り出した。
たくさんの視線を感じる…ああ、いやだ。私は目立ちたい願望なんて一ミリもないのに。
外へ行くよりも屋上へ行く方がいいと思った私は二人を引っ張って上へ上へと向かった。
その間二人とも何も話さないもんだからどんな表情しているんだろうと思ったけれど怖くて振り向けなかった。
屋上は誰もいないようでとりあえずほっと息をつく。
二人の腕を解放しゆっくりと振り向くと意外と怒った様子もなく総司はいつもの爽やかな微笑み、風間さんは少しだけ驚いたような様子だった。
「…積極的な女は嫌いではない。」
「何言っちゃってるんですか、風間さん、目を覚ましてくださいお願いします。」
「貴様こそ何を言っている。この俺の何が不満なのだ。」
「いや、不満とかそれ以前にですね…。」
どうにかこうにか説得をしようとしている私の腕を総司が引っ張り自分へと引き寄せた。
「ねえ、この子僕の彼女なんだけど。知ってるんだよね?」
頭上へおりてくる総司の言葉に胸がキュンとする。
だ…だって聞きました!?
初めて彼氏っぽいこと言ってくれた気がする!こういうの求めてました私!!!
しかし浮かれていた私の心は一気に粉々に打ち砕かれることとなる。
「ねえ、少しは迷う素振りぐらいみせなよ、つまんないな。あいつと天秤にかけるようなことして僕のことハラハラさせたいとか思わないわけ?」
私にしか聞こえない小さい声が耳元に囁かれました。
な ん で 彼 氏 が
ラ イ バ ル 応 援 し て ん だ ! ! !
振り回されたい願望とか知らないから!!
顔も心も白目状態になっている私に風間さんが一瞬ひいていた気もしないでもないがもうどうでもいいです。
「俺は何が何でも貴様を手に入れ我が妻とする。沖田、お前はさっさと身を引け。」
「なんでそんなことあんたに言われなきゃならないのさ。僕に命令できるとしたらあんたじゃなくてみつちゃんだよ。」
「そうか。ならみつよ、すぐにその男と縁を切れ。」
私は夕焼け色に染まっていく空を見上げながら二人の会話をなんとなく聞いていた。
なんか…どいつもこいつも勝手すぎない?
これ私怒っていいよね…。
「おい、みつ。聞いているのか?」
「みつちゃん?」
二人に挟まれるように近づかれた私は思わず総司の方を向き両肩を掴んだ。
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