「どうしたのみつちゃん。どこか行くのー?」

「あ、ちゃんと待ってた。偉い偉い。」


放課後。待たせるのがポイントだと勉強した私はだいぶ時間をおいてから総司の教室へ向かった。
時間がたっていたというのもあって総司以外の生徒は帰ってしまったらしい。
窓の外をぼんやり見ながら私を待っていてくれた。


「ねえ総司。」

「なあに?」

「…私、ドMって…。」

「ん?」


くっ…仕方ないとは言えこの言葉を総司に言いたくなんかないけれど。


「ドMって大嫌いなの。苛められて喜ぶとかばっかみたい。だからいい加減普通に戻ってくれない?いつまでも付き合ってくれるとか思ってるんじゃないんでしょうね?さっさと戻らないなら別れるけど。」


言った…。
言ってやった。

総司は私をドSに調教するとか言ったけど。
そもそも調教はSがMにするものじゃない。だったら私が総司をドノーマルに戻してあげればいいのよ!!!


「…。」


総司はぽかーんとした表情で私を見ていた。
あ。
でもじゃあ別れようかって言われたらどうしよう。
そこまで考えてなかった!!!


「みつちゃん。」

「は…はい。」

あ、思わず敬語。
だけど総司はそんなの気にしていないらしい。

「やればできるじゃない。結構良かったよ、今の。これからもそんな感じでよろしくね。」


違う。
私が欲しいのはそんな握手じゃない。
わかった、がんばるよって言葉だけだ!!!!!


「だっだからー!ドMなおせって言ってるでしょ!?!?馬鹿なの!?」

「みつちゃんが言うと可愛いよね。ほんと、着々とSっぽくなってていいなあ。これからが楽しみだよ。ほら、帰ろうか?」

「ちゃんと…話を…聞いて…。」


がくりと膝から床についた私の腕を掴んで総司が立たせようとする。
この方法でも駄目ってどうすればいいの。
ドMってスーパーポジティブなの?何故自分の良いように捉える!?


「真っすぐ帰る?寄り道する?」

「…奢りなさいよ…アイス…。」

「いいよ。今日は僕機嫌いいし。行こうか。」


だめです。
ドMを調教することは不可能でした…。
アイスを奢らせるという可愛らしい反抗しかできない私を…
誰か助けてくださいませ。



つづく

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