二人きり

今や小学生でも彼氏彼女がいる時代。
そんな時代にほのぼのした恋愛をしている高校生っていうのがいるのはいいことなのかもしれない。
お互いが思いあっているのになかなか進まない…みたいなね。


「奈緒。これ新発売なんだってさ。食べるか?」

「あ、コンビニで見て買おうか迷ってたんだ。ありがとう平助君。」

「いいって。お前好きそうだなーって思ったんだ。」

「そ…そうなんだ。」

「あ、いや、お…俺も食べたかったし!気にしないで食えよ。」

「うん。」


昼休みにこんな会話が繰り広げられて微笑んでいられるのは大人か、心が広い人ぐらいなんじゃないの。
僕は半眼でカフェオレを飲みながら目の前の二人を見ていた。
一君にいたってはもう昼食を食べ終わったからか文庫本に目を通している。

別にいいんだよ。
二人には二人のペースってもんがあって。
他人が口出すことじゃない。
だけどさ。この状態が毎日続くわけで。
僕や一君は巻き込まれるわけだ。
他のクラスメイトから二人は付き合ってるって思われていることすら当の本人たちは気づいてないんだろうな。

たまにならいいけど。
毎日毎日くっつきそうでくっつかないこの状態を見せつけられる僕たちの気持ちに彼らはいつ気づくんだろう。
気づいたときは僕の好きなお菓子たっくさん買ってもらわないとね。
何気に二人が過ごしやすいようにみんなで休みの日に出かけたりするんだからさ。





今日は部活がないからと僕と一君、平助君に奈緒ちゃんの四人で放課後アイスでも食べに行こうという話になった。
帰り支度をしたときに永倉先生に僕と一君が突然呼び出された。
どうやら資料を運ぶのを手伝ってほしいらしい。
真面目な一君が断るはずもなく、そして僕を逃がすはずもなく…。
平助君や奈緒ちゃんに少しだけ待っててほしいと告げて先生の手伝いをしに行った。


時間はほんの十分ほどだったと思う。
僕と一君がたわいもない会話をしながら教室へ向かっていた。
廊下まで響く平助君の笑い声。
なんとなーく僕と一君は教室を静かに覗き込んだ。

二人は昨日見たテレビの話をしているのか楽しそうに笑っている。
もう他のクラスメイトも帰っちゃったみたいで教室に二人きり。
会話の流れだったのか、平助君の手が奈緒ちゃんの手に触れた。
みるみる奈緒ちゃんの顔が真っ赤になって…
遅れて気が付いた平助君の顔も真っ赤になる。


さすがにお互い気づいてるよね。
もういい雰囲気だから告白しちゃいなよ、平助君。


そんな風に思った僕の気持ちを見事にスルーしてくれるのが彼らだ。
平助君が慌てて離れると奈緒ちゃんもうつむいて「大丈夫」と答えて。
しばらく沈黙、のちにどちらからともなく笑う。


「…なんだ、あれは。」

「言わないで。一君。僕は一年のときからずっとこんな状態を見てるんだから。」


隣であきれ顔の一君に僕は深いため息をつきながら話した。
さすがの一君も僕を気の毒に思ったのか、ぽんと軽く肩を叩いて教室に入って行った。
それに僕も続く。


二人きりなのに


いい加減にくっつきなよ。
イライラするのはこっちなんだからさ。
…でも、あんな風に笑い合ってたら
言えるわけないじゃない。

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