「ぶはっ!あははははは!もう最高!!美月って本当に可愛いよね!」
「あれ?え?総司?」
「そんな堂々と言ってくれるとは思わなかったな。嬉しいけどさ。」
「え?え?」
さっきまで悲しそうに泣いてたよね。
あれ?別人?別人なのですか?
「ほんと、大好きだよ、そういうところ。」
「別れるって…。」
「そんなの嘘に決まってるじゃない。」
そう言って総司は手の中に持っていた目薬をひらひらと見せつけた。
まさか…嘘泣き…だと?
「だって今日はエイプリルフールなんだからさ。」
「あ。」
ああああああああああ!
しまったああああああ!
朝まで覚えてたのに忘れていたあああ!
どんな嘘にしようか考えてたんだけど意外と即興でうまくいくもんだねなんて総司が笑っている。
「あの…もしもーし。」
パニック状態の私と、笑いすぎて涙目になっている総司に平助が申し訳なさそうに声をかける。
「今日って四月一日だよな。そのー…どこまで嘘なんだよ。」
「あ!美月ちゃんが総司と付き合っているっていうのも嘘なんだろ!?嘘だよな!嘘って言ってくれよ!!!」
「落ち着けよ新八。」
「なんだエイプリルフールかよ、ふざけたことしやがって。」
「人騒がせだな。」
みんなが防具をつけて練習を再開しようと動きだす。
あれ?これじゃまたみんなに伝わってないよね。嘘だって思われてるよね?
どうしようかなと思った時だった。
「やだなあ。付き合ってるのは本当だよ。」
総司の嬉しそうな声が道場に響く。
みんながすごい勢いで私達の方を振り向いた。
と、ほぼ同時に総司が私を引き寄せる。
「「なっ…!」」
「!?」
くいっと顎に指をかけられたと思った時にはキスされていた。
突然のことに目を閉じる暇もない。
すぐに離してくれたけど顔に熱が集まって何も言うことができなかった。
「と、いうわけで…みんな手をださないでね。ま、僕に勝てる自信があるなら構わないけどさ。」
脅しともとれる最後の台詞に一年生のほとんどが青ざめていた。
「あーやっぱりか。」
やっぱりって何ですか、原田さん。
「総司が…美月と…。」
瞬きしすぎだけど大丈夫?平助。
「うわああああ!」
「…。」
何故か叫ぶ永倉さんとは対照的に何も言わない一君。
「ちっ。一番気に入らねえな。」
「土方さん、そういうの嫉妬って言うんですよ。うわー男の嫉妬って見苦しいですね。」
「うるせええ!総司!相手してやるから防具つけやがれ!!」
目の前で繰り広げられる追いかけっこ。
顔の熱がひかないまま、私はそれを見ていた。
「…沖田君らしいね。」
千鶴の苦笑いに私も笑うしかない。
何故か泣き崩れる永倉さんに慰める原田さん、固まったまま動かない一君を必死に揺さぶっている平助。
なんだか騒がしいけれど…本日も通常運転です。
やっぱり総司を騙すことはできなかったな。
来年は絶対に騙してみせるんだから!
そうだね、何か幸せな嘘を用意しようか。
終
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