のんびりと夕食を済ませると私たちはまたソファに並んでテレビを見ていた。
総司にもたれかかってテレビ見てるの幸せ。



「ねえ、総司。」

「ん?」

「なんか幸せだね。」

「どうしたの、急に。」

「うーん…最初はね、記念日だし、特別な事したいなって思ったんだけどね。」


そんなことしなくても。
こうして隣にいられるだけで。
それだけで。


「毎日一緒に過ごせるだけで幸せなんだなって思ったら…別に特別な事なんて必要ないなって。だって毎日が特別なんだもん。」

「美月…。」

「だから。これからもよろしくね?総司。」


そう言って笑いかけると総司も笑ってくれた。
甘い空気が漂いそうになった瞬間。



――ピンポーン


と部屋にチャイムの音が響き渡る。




「誰だろ…?」

「ねえ、美月。」

「ん?」

「僕も毎日が楽しくて、毎日幸せだよ。だけどね。」


すっと総司が立ち上がり部屋の扉へと向かう。
どうやら代わりに出てくれようとしているらしい。
振り向いて首を少しだけ傾げて笑う。


「今日ぐらいは特別なこと、させてよ。」

「え?」


それだけ言うと総司は扉を開けて玄関の方へ向かっていった。



特別な…こと?
なんだろう?
もう夜だし、これから出かけるとは言わないはず。
もしかしてこのチャイム、何か関係があるとか?


耳をすますと声が聞こえる。
どうやら宅配便のようだ。ガサガサと荷物を受け取る音がした。


バタンと玄関が閉まる音がして。


その後すぐに部屋の扉が開いた。



「…。」



声が出ない。
だって。



「美月。どうしたの?」


だって。
総司の手には赤いチューリップの花束があるから。
一年前、私に告白してくれた時と同じ、赤いチューリップ。


「はい。」

「…あ…あの…。」

「これからもよろしくね?毎年少しずつ本数増やして、おばあちゃんになる頃には持ちきれない量にしてあげるよ。」


笑いながらそんなこと言ってる総司。
全然笑えないよ。
嬉しすぎて涙がでそうだよ。


「おばあちゃんになるまで…一緒にいてくれるの?」

「ひどいなあ。美月は一緒にいてくれないの?」


ぼろっと涙が一つ落ちて。
私は花束を横に置くと総司に飛び込んだ。



「まさか泣いてくれるとは思わなかったなあ。」

「っ…だって…。」

「はいはい、ゆっくり呼吸して。」


だって。
記念日に体調崩すような奴だよ?
ちっとも女の子らしくなれないし。
大雑把だし。
そのわりに恋愛ごとになると割りきれないことが多くて面倒だろうし。
あほだし。


だけど。
そんな私でもいいって言ってくれるの?



「こんなことで泣いてどうするの?」

「こんなことって!」

「まだ続きがあるんだけど。」

「え!?」

「っていうか…言いたいことがあるんだけど?」


総司はそう言って私の手をひくとソファへ移動して座らせる。
横に並んでいる状態なのに向かい合ってて何だか変な感じなんだけど仕方ないよね。

ゴホンと咳払いをして総司が私を真っすぐに見つめた。







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