「具合はどう?」

「うん、もうだいぶいいよ。」


むくりとベッドから起き上がると総司が無理して起きなくて良いよ?と心配そうに見つめてきた。


「おかゆ…食べられそう?僕が作ったからいまいち自信ないけどね。」

「総司が作ると絶対ネギは入ってないよね。」

「当たり前。」


一昨日から急に熱をだした私を総司は泊りがけで看病してくれていた。
おかげさまで熱は下がってもうだいぶ元気なんだけど総司が完全に治るまで寝ててとなかなか起き上がらせてくれない。



「本当に…ごめんね。」

「ん?ああ、だからいいって。気にしないの。」

「うん…。」


おそらく沈んだ顔をしていたであろう私の頭を総司は優しく撫でた。


気にしないなんて無理だよ。
本当に本当に楽しみにしてたんだから。


今日。
私たちは付き合って一年になる。
大学も休みに入っていることだし、レンタカーを借りてどこかへ行こうという話をしていたのに。
私の風邪のせいで流れてしまった。
遊びに行くなんていつでもできるでしょ?と総司は笑っていたけれど…。



一周年の日は今日しかないのに。



私は自分の情けなさに泣きそうになる。
こんな彼女で総司はがっかりしてないかな?
記念日に体調崩すなんてさ。



総司が用意してくれたおかゆを目の前にしてそんなことを考えているといつまでも食べ始めない私を不審に思ったのか総司がつんつんと頬をつついてきた。


「どうしたの?食欲ない?」

「え?」

「ぼーっとしてる。まだ熱があるのかな?」


どれどれと私の前髪を手で上にあげると総司はおでこをくっつけてきた。

え?おでこ?


「ちょっ!!!ちかっ!」

「熱はないね。…顔は真っ赤だけど。」

「うるさいなあ!総司がいきなり…。」

「え?いきなり何?熱があるのか調べてあげただけじゃない。」


ニヤニヤして聞いてくるのが腹立つ!
私が照れるのわかってるくせに。


「でも食欲ないなら無理しないでいいよ。」

「違う違う。考えことしてて…。」

「…どうせろくでもないことでしょ。」

「どういう意味よ。」

「ほら。」


おかゆを掬ってふうふうと冷ますと総司は私の口元へ持ってくる。


「自分で食べられるよ?」

「知ってるよ。僕が食べさせたいんだけど。」

「っ…。」


はいっと微笑むの反則。
ただでさえかっこいいのに何でそういうことさらって言えるのかな。
もう付き合って一年たつのに全然慣れないよ、何で!



ぱくりとおかゆを口に入れると薄味だけど優しい味がして体があったかくなってくる。



「おいし。」

「そう?良かった。食べられるだけ食べて薬飲んでね。」

「はーい。」


風邪をひいたのを看病するのって女の子のイメージだった。
…私はやっぱりまだまだ女子力というものが足りないらしい。




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