順調に山を登っていた。
途中で綺麗な花を見つけて。
写真を撮ろうしたんだ。

山登りのコースから少し外れたけど、
すぐ戻れるような距離だったし。
大丈夫と思ったのが間違いだった。

手を滑らせてカメラを落とした。
おむすびころころのごとく。
カメラが斜面を下ってしまったのだ。

「わ!こら!」


すぐに追いかけてキャッチ!
あっぶなーいとか思いながらもと来た道を登った。

はずだった。


「ここ、どこだろ。」


冒頭に戻る。

あ、いや本当に戻ったら無限ループだから戻らないで。


おかしいな。
山登りなんだから上へ向かえば頂上じゃないの?
携帯圏外だし。
道が険しい。
これは山登りコースではない。


「疲れた。」

じっとしてようかな。
動きすぎるのもよくないって言うし。


「総司…。」


気付いてないよね。
こんな景色のいいとこきたら一句よみたいですねー土方さんとか言って土方さんからかってたもん。もちろん先頭で。

ただでさえ歩くの遅い私は一番後ろだったし。
もしかしたら頂上つくまで誰も気がつかないんじゃないの。


暗くなっても誰もこなかったらどうしよう。
ってかクマとかでたらどうしよう。

春だし、凍死はしないかもしれないけど
こわいよ。


こわいよ。

総司、助けて。



「美月?」

あーもう。
総司のこと考えすぎて幻聴聞こえた。


「美月!」

「総司?」


振り向いたら総司がいた。
だから、気配消さないでってば。

総司の姿がみるみるぼやける。
安心したら涙が。

「何してるの。こんなとこで。」

「え?」

「いつになっても来ないからさ。みんな心配してるんだけど。」

「あの…遭難。」

「いや、すぐそこがもう山登りコースだから。少し外れてるだけで。まさか迷ったと思った?」

「か…カメラ…ころころ…迷って…うぅ。」

「あぁーもうわかったから!泣かないで。」

総司が優しく抱きしめてくれた。
安心して涙がさらにでた。

「ちょっと!さらに泣くってどういうこと!」

「あ…安心して。」

「…鼻水つけないでね。」

「むりぃー。」

しばらくそうして抱きしめてくれていた。
頭もぽんぽんなでてくれた。

「総司いいにおい。」

「変態。」

「えへ。」

涙を優しくぬぐわれた。

そして。

チュッと唇から音がした。

「!?」

「迎えに来たんだからそれぐらいいいでしょ。」

涙がひっこんだ。

「ほら、そろそろ戻るよ。」

「…はい。」


泣き顔にグッときたとか。
泣き笑いの顔も可愛いとか。
そんな顔みんなに見せたくないとか。

めちゃめちゃ甘くなってしまう発言は
胸にしまう総司であった。






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