ほっぺたにツンツンと何かがささる感触。
ゆっくりと目を開けると総司が私を覗きこんでいた。
「あれ?私…。っ!頭いたっ!」
起き上がった瞬間に頭にズキズキと痛みが襲ってくる。
「ほら、水。」
「ありがと…あれ?ここどこ?」
「僕達が飲んでた部屋の隣だよ。」
個室が空いていたのか並べられた座布団の上に寝かされていたらしい。
隣からはみんなの騒がしい声が聞こえてくる。
「大丈夫?」
「えっと…。」
思い出せ。
私。
どうしてこうなった?
確か永倉さんのお酒間違えて飲んで…。
あれ?
記憶がとぎれとぎれだ。
「確か間違えてお酒飲んで…楽しくなって…だけど総司が何でか怒ってて…。」
「怒っていた原因は忘れちゃったわけ?」
腕を組んで私を見る総司はどうやらまた不機嫌なようで。
一気に体温が下がった気がします。
だって目が冷たい!!!
「君が平助に抱きついたり好きだなんだの叫んだりしたのは忘れちゃったのかなあ???」
「えええ!?」
私そんなこと!!
…した気がしてきた。
「他のみんなにも愛を叫んでいたけれど?」
確かに…みんなに好きだって言った気がする。
そりゃ怒るよ、総司だって怒るよ。
カンカンになるよ。
いや、いっそカンカンに怒ってくれればいいんだけど完全に氷点下の視線です。
「しかも…。」
「え?」
「僕にだけ言ってくれなかった。」
「え…???」
総司にだけ、好きって言わなかった。
うん、確かにそれも覚えてる。というか思い出してきた。
もしかして…拗ねてる?
ぷいっと横を向いて座っている総司がとてもかわいく見えてきた。
だってこれ完全に拗ねてるだけだもん。
小さい子みたいだもん。
「総司…それで怒ってるの?」
「…。」
「だって、そこで総司にも好きとは言いたくなかったんだもん。」
「どういうこと?」
「みんなと同列の好きじゃないから。総司のことは大好きだから…あの時には言いたくなかっただけで…。」
これは本当。
みんなのことは好きだけど総司は違うもん。
特別だから…。
大好きだから…。
「美月…。」
総司が手を伸ばして私を抱きしめた。
ほんとずるいんだからって呟きながら。
「もう僕がいないところで強いお酒飲んじゃ駄目だからね。」
「うん。」
「次からは千鶴ちゃんの隣に座るように。逆隣りは僕。」
「うん。」
「僕以外に好きとか簡単に言わないでよ。」
「うん。」
こんなに総司にお願いされた事なんて今までなかったんじゃないかな?
嬉しい。
だって。
私のこと、本当に好きでいてくれるのが伝わるから。
「ごめんね、総司。」
「…まったくだよ。」
そう言うと総司は腕時計を見て私に上着を渡してきた。
「え?」
「ほら、ちゃんと着て。行くよ。」
「え?どこに??」
「いいから。」
そう言うと総司は私の手を引いてこっそりと部屋を出た。
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