「美月が水飲んで少し休んでくれるなら…離れようかな。」


後ろからそんな声が聞こえてきた。

え、やだ。
離れちゃうの?


くるりと後ろを見ると少しだけ不機嫌そうな総司がいた。
何でそんな顔してるの?


「そーじ…怒ってるの?」

「まあね。ほら、水飲んで。」

「やだ。」

「何で。」


完全に怒ってる。
どうして?さっきまで普通だったのに。


何だか悲しくなってきて視界が歪んで総司がぼやけた。
お酒のせいなのかわかんないけど簡単に涙がこぼれる。


「美月?」

「だって飲んだら離れちゃうんでしょ…。」


総司に届くかどうかという小さな声しか出なかった。喉が熱くて声がでにくい。


「離れるのヤダよ…。」

「っ!…そういうこと今言うかな…。」


不機嫌だった総司の顔が赤くなる。


「ほんとずるいよね。」


そして総司は持っていた水を口に含むと


「!?」

「え!?」

「!」

「総司!!?」



私にキスをした。
すぐに水が流れ込んでくる。
少しずつ少しずつそれを飲みほした。


「んっ…。」

「ほら、もう少し飲んで。」


総司はもう一度口に水を含んでまた口移しで私に水を飲ませる。



あれ?
今忘年会で…
みんないるんだよね?
え?
あれ?
何で…キス…。


考えなくちゃいけないのに頭が全然動かない。
それどころか冷たい水で喉は潤ったのに頭は熱くなるばっかりだ。


しかもキスが心地よくて段々瞼が落ちてくる。
みんなの騒いでいる声も、お店の音楽も少しずつ小さくなってきた。



唇が離れて私の頭はそのまま総司の胸元に埋まる。



「お…お前一体何してやがる!?」

「離れろって!総司!」

「はいはい、静かにしてよ、二人とも。美月が寝そうだから。」

最初に声をあげた土方さんや平助のほうを向いて総司はシッと人差し指を口元にあてた。
一君が小さな声で続ける。

「あんたは一体何を考えているんだ!?」

「水飲まないで急性アルコール中毒になっちゃったらどうするの。人命救助でしょ。」

「そ…そうか。総司はそれで水を飲ませようとしたのか。」

「おいおい、信じるの近藤さんぐらいだろ。」

「酔っている女の子にそんなことするなんて…左之の手口じゃねえか!」

「おい!俺は使わねえって言っただろうが!」

「みっみなさん落ち着いて!!」



何だかみんな怒ったような焦ったような声だった気がするけど。
どうしても勝てない強烈な眠気に襲われて私はそのまま総司の腕の中で眠ってしまうこととなる。





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