忘年会がスタートしてから一時間ぐらいが過ぎた。
ただいま夜十時。後二時間で今年も終わるんだなあ。
そんなことを考えながら隣に座っていた総司を見る。
ふわっとした茶色い髪。
綺麗な翡翠色の目。
かっこいいよね。
誰が見たってかっこいいと思うんだ。
今でも時々信じられないんだけど本当に私の彼氏なんだよね。
じっと見ていると総司が私の視線に気がついたみたい。
飲みかけのグラスを置いて「ん?」と首を傾げた。
…殺人級に可愛い。
「どうしたの?そんなに見られると恥ずかしいんだけどな。」
全然思ってないでしょ。恥ずかしいとか。
「美月?」
「何でもない!」
逆にこっちが恥ずかしくなってきて横に置いてあったグラスの中身を一気に飲み干した。
「あ!美月それ…!」
「へっ…?う…何これ…。」
「ああ!美月ちゃん!俺のお酒!」
「あ…間違え…た…。」
「おいおい!それウォッカだぞ!?大丈夫か??ほら、水水!!」
原田さんに渡された水が二重に見える。
あんな強いお酒飲んだことがないから一気に体が熱くなってふわふわする。
水を飲みほしたけど相変わらず体は熱いまま。
でもなんか。
ん?
気持ちいいかも?
「大丈夫?美月。もう少しお水もらった方が…。」
「らーいじょーぶ。」
「美月ちゃん!?呂律が回ってないよ!?」
「平助、もう一杯水をもらってきてくれ。」
「ああ!」
「おい、どうした。」
離れたところに座ったいた土方さんが近くにやってきた。
でも土方さんが時々二人に見える。
「土方さんが分身の術使ってる…。」
「しっかりしろよ!ほら、水!!」
「美月ちゃんがウォッカ飲んじゃって…。」
「ゆっくり水飲んで?飲める?」
横から総司が水を差し出してくる。
なかなか見られない総司の困った顔がなんだか珍しくて、おかしくて、私は水を受け取らなかった。
「いりゃなーい。」
「だめだよ、ちゃんと飲んで。」
「やだー。」
「美月!」
「らいじょうぶらよー。楽しくなってるだけだから〜。」
笑いながら総司に言うと私とは反対に総司はしかめっ面になる。
「…美月。」
「まあ…酔っ払っただけなら大丈夫か?少しずつでいいから水飲んでくれよ?」
「ああ、気持ち悪くなったら言えよ?」
向かいに座る永倉さんと原田さんが心配そうに私を見ていた。
大丈夫ですよ。
ほんとみんな心配性。
だけど、嬉しいな。みんな優しくて本当に…。
「えへへ、ありがとうごじゃいます…。」
「おいおい、本当に大丈夫?」
「らーいじょうぶですよ!永倉しゃん!」
「ほら、グレープフルーツジュースっていいらしいぜ?あとはちゃんと飯も食って…。」
隣の平助がジュースとおつまみを渡してくる。
そのジュースを受け取り一口飲むとテーブルに置く。
なんか親身になってくれる平助がありがたく思えてきた。
「平助…。」
「ん?どうした?気持ち悪い?」
「好き。」
「…は?」
「好きだー!ありがとー!!!」
「ちょっちょっと!!!!」
「美月!?」
思わず平助に抱きついた。
だってこんなに優しいんだもん。
なんで彼女いないの?おかしいよ。
みんな目腐ってる。
「美月!!とりあえず一回離せって!いや…嬉しいけど…その…。」
「平助はー良い奴ですー!」
「おいおい!平助離れろ!」
「俺じゃねえって!美月が…。」
平助にくっついているとぐいっと後ろに引っ張られた。
あれよあれよと総司の腕の中におさまる。
「…どういうつもり?」
「え〜?」
総司が低い声で聞いてくるけど何だか怖くない。
お酒の力はすごいなーなんて思っていると向かい側の原田さんが楽しそうに聞いてきた。
「おい美月。俺のことは嫌いか?」
「好きですよー。」
「えっ!?美月ちゃん俺は?!」
「好きです。ってか土方さんも、一も、千鶴も近藤さんも…みんなみんな好きです!!」
「はははは。嬉しいなあ。俺もみんな大好きだ!」
私の叫びに近藤さんも一緒に大きな声で言ってくれる。
優しいから近藤さんも大好き。
「…ただの酔っ払いか。」
「そのようですね…。」
「美月ちゃん酔ってるだけなんだね。」
「と、いうことだ。本気にするな、平助。」
「わかってるよ!!ってか総司も離せよな。いつまで美月抱っこしてるんだよ。」
「ん?」
背中に総司の温もりを感じて心地いい。
平助はなんだか怒ってるけどこのままがいいな。
ってだめだめ、みんないる前でこんなにくっついちゃだめだよね。
でも今日ぐらいはいいかな?
ああ、もうよくわかんなくなってきた。
考えるの面倒。
ちょっと眠いし…。
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