「よーし、みんなお酒は持ったか?それでは乾杯!!!」
「「「かんぱーーーい!!!」」」
近藤さんの乾杯の音頭で忘年会がスタートした。
剣道部で忘年会をすることは前々から決まっていたことなんだけど大みそかにするもんだからほとんどの部員は実家に帰っていて参加していない。
参加しているのはいわゆるいつものメンバーだけだ。なんでみんな帰らないんだろう。
…まあ私もだけど。
「ほらほら、美月も飲めって!」
「あ、ありがと。平助。」
隣に座っていた平助が私にドリンクメニューを渡してくれる。あまりビールが好きじゃないこと知ってるからね。
「うーん…パッソアにしよっかな…千鶴は?」
私は向かい側に座っていた千鶴にメニューを渡した。
「えっと…カシオレ。」
「はいよー。すみませーーーん!」
平助が大音量で定員さんを呼んでくれ注文してくれた。
うん、テーブルにある呼び出しボタン意味ないな。
「やっぱ女の子は甘い飲み物好きだよな。酒飲んでるって感じしなくないか?」
千鶴ちゃんの隣に座っていた永倉さんが私たちの所へ運ばれてきたドリンクを見て言った。
すると横に居た原田さんが永倉さんの肩を叩いて口を開く。
「まあ、ジュースみたいだから俺たちじゃ物足りないかもしれないが…意外とアルコール度数は高いぞ。新八、うまく使えば酔わせられるんだぜ?」
「うっわー…最悪だな、左之さん。美月、千鶴、絶対に左之さんの横にいくなよ。」
「おいおい、俺がそんな卑怯な手使うと思ってんのか?生憎そんな手使わなくちゃいけないほど困ってねえよ。」
「くっそー!何で左之ばかり!!!」
「あーもう始まったよ。」
まだ忘年会はスタートしたばかりなのにすでにできあがって泣き始めた永倉さんを原田さんと平助が慰めている。
「はい、美月ちゃん。」
千鶴が運ばれてきたサラダやおつまみをとりわけてくれる。
「ありがとう!」
「はい、沖田君も。」
「ありがとう、千鶴ちゃん。」
私の右側に座っていた総司にも千鶴がお皿を渡していた。
その後も千鶴は両隣の永倉さんや一にとりわけ続ける。
「千鶴ちゃんは気がきくよね。」
「…はっ!しまった!私何もしていない!」
「良いんじゃない?誰も期待していないよ。」
「う…!!!!」
しまった。
女子としてどうなんだろう。
しかも彼氏に期待していないと言われる私って…!!!
「あ、総司グラスあいてるよ?」
「ん?あ、ありがとう。」
言われたからってわけじゃないけど…。
できることはしなくちゃね。
私は空いた総司のグラスにビールを注いで…。
こぼしました。
「ごっごごごごめん!!!!」
「いいよ、たいして濡れてないし。ほとんどテーブルに零れてるから。」
そう言ってテキパキとテーブルの上を拭いていく総司。
完全にいつも通りの表情で全然怒ってる様子もないんだけど…。
逆にへこむじゃん。
慣れないことするからかな。
「がんばろうとしてくれたんでしょ?」
ぽんぽんと頭を撫でられ照れてしまう。
頭撫でられるぐらい周りに見られてもみんな何も思わないだろうけど…。
総司の表情が柔らかくなったの、気付くのは私だけなのかな?
「ま、でも仕事増えるから大人しくしててね。」
「…はい。」
その後、みんな自分で好きな物を注文しだしたので注ぐだのとりわけるだのほとんどする必要がなくなって助かった。
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