「ここどこだろ。」

そんな呟きもあっという間に消えていった。
無理もない。
一人だから。

「どっちいけばいいんだろうな。」

前の呟きを追いかけるようにまた消えた。

「もーみんな、すぐどっか行っちゃうんだから。…とか言ってる場合じゃない!私…。」

遭難しました…ね。












桜も散り始め、あたたかい日が続いたある日のこと。

「さて、そろそろ恒例行事といこうか。」

「あ、山登りですね。」

近藤部長がニコニコしながら呟いた言葉に千鶴が反応する。
我が剣道部は毎年、桜が散ったころに山登りに行く。
目的は体力づくり?
というよりただ山登りして、みんなで騒ぎたいだけだと私は思っている。

去年はハイキングみたいで楽しかった記憶がある。

「今年は一年が多いからな。みんなで行くとなるとけっこう大変だぞ。」

「うーん。確かに。では二つに分けるか。」

土方さんの言葉に近藤さんは少し考えると二班に分けることを提案した。

近藤さんの班と副部長である土方さんの班に分け、どっちになるかはくじ引きだった。

私は…。

「あ、土方さんだ。」

「私近藤さんです。」

「えー千鶴と別々?やだー!」

「私も一緒が良かったです・・。」

「僕も近藤さんと一緒に山登りしたかった・・。」

いきなり後ろから総司が現れる。
気配を消さないでとあれほど言っているのに。
ほら、千鶴がびっくりしたじゃない。


「ってことは総司も土方班?」

「残念ながら。」

「総司!残念とはどういう意味だ!」

「そういう意味です。」

あー、また追いかけっこが始まった。
一年生も慣れてきたからか苦笑だよ、苦笑。

近藤さんの班に原田さん、山崎さん、一君、千鶴。土方さんの班に永倉さんと平助と総司と私。そして一年生は半分に分けられた。

今回、院生の山南さんは実験で手が離せないため欠席だそうだ。


「なんか不安。」

「どうして?」

「冷静にとめてくれるツッコミが全部近藤さんのほうに行っているから。」

「僕がいるじゃない。」

「…………。」

「何、その疑いのまなざし。」

練習がはじまり、土方さんから解放された総司が横に座った。

「練習しなさいよ。」

「するよ。でも最初から僕が入ると一年生いじめすぎちゃうから。」

「自覚あるなら優しく教えてあげなさい!」

「僕が優しくするのは美月だけ。」

「は…?」


何を言い出すか、こいつはーーーー!
サラっと言った!

「はは。真っ赤だよ。こういう言葉弱いよね。」

「そんなことない!」

思わず下を向いた。
総司と話していて顔が赤くなっていたなんて見られたら何を思われるかわからない。
まだ誰にも付き合っていることを言えずにいた。

(自分から言うのもなんだしなぁ。)

「あ、後で山登りグッズかいにいこ。」

「え?」

「今回は去年よりもう少し高い山行くみたいだから。といっても初心者でもいけるみたいだし、心配ないと思うけどね。」


練習が終わった後、総司と買い物に行った。
靴とかリュックを買い、準備万端!
あとは当日を待つのみとなったのだ。




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