「…ん。」

「起きた?」


ゆっくりと目をあけると総司の顔が見える。
ふわふわと髪をずっと撫でていてくれたようだ。


「あ…私どれぐらい寝た?」

「うーん。今日は一時間。」

「ええ!?」


思い切り起き上がって時計を見ると確かに一時間が経過していた。
テレビは一時停止された状態でどうやら総司は携帯をいじって時間を潰していたらしい。



「あ…ごめん。」

「いつものことでしょ。」


それを言われちゃおしまいです。


「今日はいっぱい借りてきたんだし、どんどん見なくちゃいけないんだよ?」

「うう…明日も休みだし、夜更かしして見ようよ。」

「夜更かしできるの?また眠らない?」


眠らない!と力強く答えられたらどれだけいいことか。
自信がない。ないです。


黙り込んだ私に総司が何か思いついたのかとても楽しそうな表情になる。


「じゃあ眠くならないようにしてあげるよ。」

「??」


後頭部をがっつり掴まれると一気に引き寄せられた。
次の瞬間にはキスをしていて、しかもさっきみたいな可愛いものじゃない。


「んっ…ふ…。」


自分からでていると思えないぐらい高めの声に耳を塞ぎたくなる。
ゆっくりと鼻で呼吸をしようとするんだけどどうしても息苦しくて。
ドンドンと総司の肩を叩くとやっと解放してくれた。



「次から寝そうになったらキスするから。」

「へ…?」


肩で息をする私に余裕の表情の総司。


「ほら、目が覚めるでしょ?だけどあまり何回もさせないでね。」

「なん…で。」

「そんなの決まってるじゃない。」


――それこそDVDなんて放置して美月に夢中になっちゃうから。


そんなこと言わないでよ。
どうしていいかわかんないから。


「まあDVDより美月のことずっと見ていたいけどね。」

「っ〜〜〜続き見るよ!ほらほら!」

「はいはい。」


恥ずかしくなってお笑いのDVDを再生した。
くすくす笑ってるけどそれDVDのせいじゃないよね。私に笑ってるよね。


いつか…私が余裕の表情で総司を笑える日なんてくるんだろうか?
それはそれで一度は見てみたいと思うんだけどそこまでの道のりが遠すぎて全く見えない気がしたのでとりあえず寝ないよう目の前のDVDに集中することにした。






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