「なーにーゆーえー…。」
「なんでこんな…。」
「おお!良いぞ良いぞ!二人とも!これでうちの売上一番間違いない!!!」
「いいじゃねえか。可愛いぜ、二人とも。」
「っか…かかっ…可愛いと思う。」
学園祭当日。
結局私たちはジュース&スープバーを開くことになりました。
もちろんすぐ隣で試験も行うんだけどね。
試験は一年生にお任せして、他の部員は主に接客。
飲み物だからテイクアウトが主だけど少しだけ座って飲んでいけるスペースもある。
で。
そこまでは良かったんだけどね。
永倉さんが持ってきた私と千鶴の衣装がメイド服。
ええ、ふりふりのメイド服。
荷物を置いている空き教室で着替え、三人にお披露目しています。
「百歩譲って千鶴はいいとして、私はみんなと一緒の執事の格好がいいです。」
「ええ!私だけは嫌だよ、美月ちゃん!!!」
「何言ってんだ。お前もよく似合ってるぞ。二人で並んでたらすぐに客がくるって。」
「…これ土方さんの許し得てます?」
「…。」
「…。」
「え!?聞いてねえのかよ?!怒られるって!」
永倉さんと原田さんが遠い目をしています。
まあもう着ちゃってるし時間もないからなあ。
そんなことを言っていると教室のドアが開く。
「………。」
「………。」
「………。」
「………。」
「…おお!岩崎君に雪村君か!いつもと違う服でわからなかったがよく似合っているなあ!」
近藤さんはそれはそれはいい笑顔です。…が。
――ドサドサッ!
一君と山崎君が抱えていた段ボールを思い切り落としていた。
土方さんは眉間に皺よせてるし。
総司は。
「へえ、誰の趣味ですか?」
目が笑ってねえー!!!!!!
一見素敵なスマイルなんですけどね。
あれ怒ってる。絶対怒ってる。
私の意思じゃないよ!この格好!
そんなに駄目か?メイド服。
露出あまりないと思うんだけどね。
「おい、まさかこの格好で…。」
「はいはい、俺たちはこれ!!!」
土方さんの説教の前に永倉さんがみんなの執事服をてきぱきと配る。
原田さんと平助なんてこの会話の間に着替え終わってるからね。はやっ。
私と千鶴が一度教室の外に出て十分後。
「入っていいぜ。」
原田さんに呼ばれて教室に戻る。
そこはイケメン執事のパラダイスでした。
「うわあ…とてもお似合いです!女性の方が集まりますよ!!!」
「…。」
自然と視線は総司にいってしまう。
衣装はみんなお揃いなんだけど。
やっぱり…
その…
好きな人って格好良く見えるじゃん…。
じっと総司を見ていると私の視線に気づいたのかにこりと笑い近づいてきた。
「どうしたの?そんなに見つめられたら穴があいちゃうんだけど。」
小声で囁かれる。
「べ、別にそんな見てないし…。」
「ふーん。それにしても。」
総司は視線を私の頭からつま先まで移動させる。
「…あまりこういう格好はさせたくないんだけどな。」
「どうして?」
「あ、違うな。させたくないんじゃなくて、見せたくない…かな。」
僕の前だけならいいんだけど。
なんて呟くもんだから。
そりゃ私だってその執事姿一人占めしたいとか思ってしまった。
「それにしても…こりゃあ人がたくさん来てくれそうだなあ。」
「あれ?近藤さんは着ないんですか?」
「俺には似合わんよ。一年生達の手伝いをしてこよう。そっちはまかせたぞ。」
そう言うと近藤さんは一年生の方へ行ってしまった。
「まあやるからにはちゃんとやらねえとな。気合いいれろ、お前ら。」
「「「おお!」」」
こうして剣道部によるジュース&スープバーが開店した。
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