道場にはもうほとんどの部員が集まっていて、平助と永倉さんが近藤さんに説明すると部活の終わりに残れる人だけで官能試験をやってもいいことになった。


「それにしてもすごい量だよね。」

「野菜はどうするのだ?そのまま食べる…ということはないだろう?」

大量の野菜と果物に総司と一君が目を丸くする。
確かに果物は皮向けば食べられるけど野菜はねぇ…。

「あ、じゃあ私と美月ちゃんでゆでておきますよ。」

「了解〜。」

さすがというか千鶴がてきぱきと仕分けをし始めた。
きっとあっという間にゆでて食べられる状態にするんだろう。

「ごめんなーみんな。」

「まあこの時期は仕方ないだろ。」


謝る平助に土方さんも思わずフォローをする。


「あれ?なんだこの野菜。」


ふらりと遅れて道場にやってきたのは原田さん。
荷物を隅に置いて果物や野菜を手にとって見ている。


「左之!遅かったな。」

「ちょっと実験が長引いたんだよ。ああ、それ試験か?」

「そうなんだよ。鬼のような量だよなー。」

「仕方ないですね。少しずつ片付けましょう。」

「そうだな。一気に大人数でてきればいいのだが…。」

果物片手に山崎君や近藤さんも準備を始めた。
すると原田さんが何かを思いついたかのように声をあげる。

「あ。」

「どうしたんですか?原田さん。」

「いい方法あるじゃねえか。」

「え?」


そう言うと原田さんはバッグから何か書かれた紙を取り出す。

「何だよ、学祭の連絡じゃねえか。」

「そういえば週末学園祭だったね。特に何もしないから忘れてたけど。」


今週の土日は私達の学部の学園祭だった。
コースや部活で有志を募って出し物や出店をするので特に何もやらない学生も多い。



「これで一気にやっちまうってのはどうだ?」

「?客に試験してもらうのか?」

「果物や野菜の試験をしてもらう代わりに余った野菜とか無料で配るとか、何か調理したものを安く売るとかしたらけっこういけるんじゃねえか?」

原田さんの思いつきに山崎君も頷いた。

「試験と言わずアンケートのようにして答えてもらえばどうでしょう?一般のお客さんも学祭はたくさん来ますからね。すぐに終わるかもしれません。」

「なるほど…!」

「その手があったか!」

平助と永倉さんが目をキラキラさせて山崎君を見ている。
思いつかなかったんだね、二人とも。

「おい、それ誰がやるんだ?」

「そりゃあ剣道部でやるしかないだろ?土方さん。」

「左之ー!!お前はなんって良い奴なんだ!」

「おお、楽しそうだな。せっかくだ。みんなでやろうではないか。」

渋い顔をしている土方さんの横で近藤さんが楽しそうに学園祭の紙を見ていた。
永倉さんと平助はハイタッチして喜んでいる。

「…では、学園祭の担当の者に今からでも出店できるか聞いてきます。」

「俺も行きます。場所の確保や必要な道具も調べないと…。」


そう言って一君と山崎君は道場を出ていった。
…この様子だと今日の練習はない気がする。



「みんなフットワーク軽いね。」

「うん。」

総司は相変わらず腰が重いね。私もだけど…。


「はあ…。簡単に決めやがる。」

「土方さんは反対ですか?」

「反対じゃねえが、けっこう大変だぞ。食品扱うのは。」


眉間に皺をよせてため息ついているけれど。
すぐに原田さんと永倉さんに指示を出しているとこからして以外と嫌じゃないんだなと思う。


「なーなー、美月。」

「ん?」


平助が腕を組みながら私に話しかけてきた。


「試験とは別に野菜を処理する為にも調理しようってなったけど…何作ろうかな?」

「そうだねー。ゆで野菜。マヨネーズもしくはバターのせ。」

「…男の料理。」

「Σうるさいな!素材の美味しさが一番伝わるやつだし!!」

「確かにそれが一番伝わるね。」

ナイス千鶴。本当に天使だよ!
誰だ、男の料理とか言ったやつ!!!…私の彼氏か。

「スープとかにしたら?あとミキサーでジュース作るとか。冷たいのと温かいの用意しておいた方がいいんじゃない?それなら楽だし。」

「お!それいいなー!」

「うう…。」(私より女子的発想!)


私より女子力の高い答えをだした総司の意見を平助は嬉しそうに永倉さんや原田さんに伝えに行った。
どうやらこの流れだとスープ&ジュースバーになりそうだ。


その後も道場のど真ん中に座り込み、みんなで週末の計画をたてた。



学園祭。
楽しいことになりそうです。






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