教科書とノートをカバンに入れようとした時だった。
ようやくこっちを向いてくれたと思ったら総司に手首を掴まれる。



「どこ行くの?」

「え?だから原田さんのところ。」

「何で。」

「だってわからないから…。」

「…どれが。」



やった!
本当は原田さんのところまで行くつもりはなかったんだよね。
総司は優しいからきっと教えてくれると信じてました。



わからない問題を指さすと図に書いて説明してくれる。



「これはこうで…。ここについて聞かれてるんだよ。GFPの話してたの覚えてない?ほら、クラゲ。」

「あ。それか!」


総司に説明してもらうと何故かすいすい入ってくるから不思議。
面倒見はよくないけど、教えるの上手だよね。
…今はそんなこと言えないけど。


ちらりと総司の横顔が目に入る。
真剣に説明しているところって…





かっこいいな。






ぼーっとしていると総司と目が合った。




「何?見とれたの?」

「ち…違う。」

「ふーん。」



唇が楽しそうに弧を描く。
頬杖ついてこっちを見ているその表情もかっこいいと思ってしまう私は末期か。



「ちゃんと聞かないなら説明やめちゃうけど。」

「ああ!ごめんなさい!聞きます!」

「じゃあ、先に家庭教師の料金もらおうかな。」

「え?」



ぐいっとひっぱられて重なる唇に。




思考が追いつかない。




だってここは図書館で。




誰かいるかもしれない…のに!?



「そ!…総司。」


思わず大声あげそうになって必死に抑えた。


「気にしないんでしょ。図書館で声だしても。だったらいいよね?」

「言いわけないから!」


いきなりのことに顔に熱が集まるのがわかった。
総司から離れようとしたのに手首を掴まれたままでそれも許されない。


「左之さんのとこに行くって言ったら僕が止めてくれると思ったんでしょ?」

「え?」



相変わらずにこにこと微笑んでるけど目が笑ってない。



「いつからそんな悪いことを考えるようになったのかな?」



え!?悪いことですか!?
総司に教えてほしいからちょっと嘘ついただけなのに…。


「他の人のところに行くなんて許さないよ。」

「他の人のとこなんて…。」



行くつもりないよ。



その言葉は総司の唇に吸い込まれた。











その後散々図書館だというのにキスをされ。
勉強どころじゃなくなり。




私のテストは悲惨なものとなりました。




…総司のアホ!








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