「おーい、総司!いるか!?」
なんともいいタイミングで部屋の外から近藤さんの声がした、と同時に総司が離れた。
すぐにドアが開く。
「お、二人ともここにいたのか。お菓子が足りなくて子供達がすねてるぞー。ほら、俺も手伝ってやるから三人で持っていってやろう。」
「はい、近藤さん。遅くなって済みません。お菓子を落としてばらまいちゃって…。」
「ははは。総司はドジだな。じゃあ俺がこっちを持っていくから、二人はそれを頼んだぞ。」
笑い声をあげながら近藤さんが部屋を出ていった。
「………。はやく終わらないかな、パーティ。」
さすが近藤さん!
近藤さんの言うことには逆らえないよね、総司って。
抜け出すことは諦めたらしい。
あ、そういえば。
私言ってなかったな…。
総司にあれを。
総司が置いてあったお菓子を持ち上げようとする前に「トリックオアトリート?」と言ってみる。
すると総司は私を見て即答した。
「トリック。」
「えぇ!?」
「どんないたずらしてくれるのかな?楽しみだな〜。」
そうきたか!
確かに総司がお菓子を持ってるか探してる姿なんて想像つかないけど。
しまった、余計なこと言った。
「ほら、はやく。」
「えぇえ!!今!?」
「だって僕お菓子持ってないもん。」
「その辺に散らばってるじゃん。」
「僕のお菓子じゃないからね。」
ニコニコしながら早くいたずらしてみろと言わんばかりに手を広げている姿が憎らしい。
いたずらって言っても…。
本当に何かしたら仕返しがすごそうなんだけど。
それに早く行かないとまた近藤さんが戻ってきちゃうかも。
意を決して私は総司に近づいた。
総司の腕を掴むとそのまま勢いよく壁のほうに押す。
「ん?」
何をするんだろうと楽しそうに私を見ている総司の肩に手を置いた。
「ちょっと、美月、頭突きとかはやめてよ…。」
話している総司にキスをした。
軽く三回ぐらい。
「戻るからね!」
そう言って逃げるように部屋を出ていった私には。
「…これじゃトリックじゃなくてトリートなんだけど…。」
と言った総司の声は聞こえなかった。
終
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